画像処理関連製品やエンべデッドビジョン製品などを展開する技術商社のリンクス。同社は、ハイパースペクトルカメラをスマートファクトリー向けに、ToF向けセンサーをスマートシティー向けに展開し、5年後の売上高を3倍に伸ばすと発表した。
専門技術商社のリンクスは2017年7月5日、事業戦略を発表した。同社の主力商材である画像処理関連製品の他、エンべデッドビジョン製品などを国内市場や東南アジア市場に向けて展開し、2021年までの5年間で売上高3倍を目指す。アジア市場にはこれまで進出していなかったが、シンガポールの技術商社であるUltravisionを買収することで、事業展開の足掛かりを作ったという。
リンクスは、IIoT(産業用モノのインターネット)による工場の自動化に関した製品を中心に扱う専門技術商社だ。中でも画像処理関連製品にかけては自信があり、画像処理ソフトウェア、工業用カメラ、FPGA画像処理ボードなど、多くの製品を代理販売している。近年、自動化の流れが工場の外にも向かっているとして、ロボットやドローンなどの自律制御を支えるエンべデッドビジョン製品の取り扱いも始めた。
社長の村上慶氏は、「世界最先端のテクノロジーをいち早く日本に持ってきて、技術立国日本の価値を高めることがリンクスの使命だ」という。同社はこれまで、先端技術を開発した海外企業と独占代理販売契約を結ぶことで企業規模を拡大してきた。2016年度には、2012年度に立案した5カ年計画を達成し、売上高と社員数を3倍に拡大。2017年度の5年後に当たる2021年度に向けても、同様に売上高3倍と社員数3倍の実現を目指す。
目標達成に向けた取り組みの1つとして、リンクスは2017年6月から、フィンランドの企業であるSpecimが開発したハイパースペクトルカメラ「FXシリーズ」の取り扱いを始めた。ハイパースペクトルカメラとは、100バンド以上でカラー信号の集録ができるカメラのこと。FXシリーズには、シリコンCMOSセンサーで可視光(波長400nm〜1000nm)を捉える「Fx10」と、InGaAs (インジウムガリウム砒素)センサーで近赤外(波長900nm〜1700nm)を捉える「Fx17」の2種類がある。
村上氏によると、工場の自動化という用途においては、近赤外を捉えられるハイパースペクトルカメラが今後、重要性を帯びてくるという。「近赤外の領域では、材質の成分ごとにスペクトルが変わる。そのため、近赤外用のハイパースペクトルカメラは、異物混入や腐食などの検査を自動化するのに活用できる」(村上氏)。
一方、エンべデッドビジョン製品に関しては、ToF(Time of Flight)センサー「epc シリーズ」を自社開発しているスイスの企業ESPROSと、日本国内での総代理店契約を締結した。epc シリーズはCCDとCMOSのハイブリッドセンサーで、撮影対象の立体情報を画像で取得する3次元測距カメラの開発に活用できる。海外では既に、自動ドア、無人配送車、ドローン、配送ロボットなどに組み込まれ、多くの企業で採用されているという。
リンクスがESPROSの総販売代理店となったのは、ToFセンサー市場の展望を見込んでのことだ。村上氏はToFセンサーの市場予測について、「2016年のToF世界市場は1426億円だったが、2025年にはその約5倍の6478億円になる。数量で言えば、192万台から4168台まで約22倍に拡大する」と説明した。
リンクスは、2017年3月1日に買収したUltravisionの社名を同年年9月1日に「LINX Singapore」に変更し、完全に統合する予定だ。Ultravisionは1997年に創業した企業であり、オートメーション産業に関わる画像処理製品の専門技術商社として事業を展開してきた。今後は、創業者であるLee Wee Khiang氏の右腕を務めたHenry Chia氏が、LINX SingaporeのManaging Directorに就任し、かじ取りを担う。
Chia氏は、「これからはLINXとLINX Singaporeの2社間で協力し、シンガポールだけでなく東南アジア全体に徐々に進出していく。今後、新たな商材を獲得するときには、日本だけでなく東南アジアでの独占代理販売契約も同時に締結するつもりだ」と語った。
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