それでは、新シリーズ「働き方改革」第1回の内容をまとめます。
【1】今回は、新シリーズ「働き方改革」に至った経緯、背景(EE Times Japan編集部と江端の腹の探り合いなど)と、このシリーズの執筆方針として、「『働き方改革』全体からのアプローチではなく、個別の江端の疑問に起因する形で、問題を個別に論じていくという形で進める」という執筆方針について説明致しました。
【2】政府の資料より、この「働き方改革」の構成要素が11項目あることを示し、それぞれについて、現時点での江端の疑問点や、今後、江端が具体的に検討してみたいと考えている事項、その他について、簡単に説明致しました。
【3】上長によって、部署全体の帰宅時間が変化するのではないかという推測のもと、「上長が早く帰宅すれば全員が早く帰宅できる」という仮説を立てて、その仮説に基づく、49人からなるオフィスの帰宅シミュレーションを実施しました。
【4】その結果、たった一人の上司の振舞いによって、オフィス全員の動向が劇的に影響を受ける ―― 具体的には、部長の帰宅が遅らすだけで、オフィスの社員の帰宅時間が2倍近くも悪化させることができる、というリアルな結果を提示しました。
以上です。
上司というのは、「上司である」という理由だけで、部下には「迷惑」な存在です(関連記事:若きエンジニアへのエール〜入社後5年間を生き残る、戦略としての「誠実」〜)。
上司は、人事権とか職務命令とかいう特殊な権力を行使できる権限を持っています。上司は、会社という組織のヒエラルヒーを維持するために必要不可欠な「暴力装置」でなければならないからです。
「暴力装置」であるからこそ、そのような暴力の行使者たる「上司」は、その運用に対して、病的なまでに神経質な注意と配慮が必要とされます。
ところが、世の中には「部下とはフレンドリーで良好な関係にある」と信じている、バカな上司が山ほどいるようです。
例えば、「拳銃を所持している者」と「拳銃を所持していない者」の関係において「フレンドリー」などという関係が成立するわけがありません。それと同じことです。
ニュースなどで、「私はパワハラの意図などなかった」と主張する会社の上司の弁明を聞きますが、私は『うん、こいつは本当のアホだな』と思っています。「当人の意図」など関係ありません。「当人の肩書」が、既に「パワハラ」なのです。
部下は、上司に飲み会に誘われたら断われないし、年長者にアドバイスを受けたら感心するフリをしなければなりません。良いとか悪いとかそういう話ではなく、会社という組織はそういう風に作られて、運用されているからです。
だから、私は、「上司」と呼ばれている、あなたに申し上げたいのです。
あなたの何げない一言や行動は、あなたの身分である「上司」という肩書によって、トランジスタのように増幅され、最大限にそんたくされて、部下に届きます。
ですから、もし、あなたが、「時間外労働の削減の実施責任者」であるなら、まず自分が定時で帰宅して自宅で仕事するか、あるいはオフィス以外の所で隠れて仕事するか、その方法は一切問わないので、
誰よりも早く、とっとと、オフィスから消え失せろ
―― と、アドバイスいたします。
上司のあなたは、「部下に対して残業など命じたこともない。その意図もない」と抗弁したいかもしれませんが、そんなことはどーでも良いのです。
あなたが上司であるというその事実だけで、あなたは、もう既に立派な「オフィス残業製造装置」として機能しているのです。
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