東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授らは、皮膚呼吸が可能な皮膚貼り付け型ナノメッシュ電極の開発に成功した。この電極を1週間、皮膚に貼り続けたバッジテストの結果でも、炎症反応は認められなかったという。
東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授を中心とする研究チームは2017年7月、慶應義塾大学医学部の天谷雅行教授らと共同で、皮膚呼吸が可能な皮膚貼り付け型ナノメッシュ電極の開発に成功したと発表した。この電極を1週間、皮膚に貼り続けたバッジテストの結果でも、炎症反応は認められなかったという。
研究チームが開発したナノメッシュ電極は、生体適合性が高い金と高分子材料(ポリビニルアルコール:PVA)をナノサイズのメッシュ構造としたものである。軽量で、通気性と伸縮性に優れているのが特長である。
高いガス透過性を検証するため、20人の被験者でバッチテストを行った。そうしたところ、皮膚に電極を1週間貼り続けても、明らかな炎症反応は認められず、自然な皮膚呼吸が行われていることが分かった。
比較のために、薄膜フィルムとゴムシートも用意して同じ実験を行った。これらの材料だとわずかに炎症反応が認められたという。これら3種類の材料で水蒸気透過性試験を行ったところ、ナノメッシュ電極の特性は極めて高いことが分かった。被験者へのアンケート調査の結果、開発したナノメッシュ電極は装着時の不快感も少ないと答えている。
また、開発したナノメッシュ電極は、少量の水で比較的簡単に皮膚へ貼り付けることが可能である。指紋や汗腺などの凹凸があっても、皮膚に密着して貼り付けることができるという。皮膚とともに伸縮しても、高い導電性を示す。研究チームは人差し指の第2関節にナノメッシュ電極を貼り付けて検証した。指の屈曲を1万回繰り返しても、ナノメッシュ電極は良好な導電性を示したという。
研究チームは、開発したナノメッシュ電極を生体電極として用い、筋電位を測定した。市販のゲル電極を用いた場合と比べても、遜色のない信号を取得することができたという。さらに研究チームは、ナノメッシュ電極アレイを指先に貼り付け、布地型ワイヤレスユニットと組み合わせることで、指の上にワイヤレスで読み出しできるタッチセンサーを作製した。小型のセンサー素子と組み合わせて、温度や圧力などを計測することにも成功している。
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