PZTの後に発見され、強誘電体メモリに応用された材料が、「タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム(SBT:SrBi2Ta2O9)」である。SBTの結晶は、「層状ペロブスカイト(layered perovskite)構造」と呼ぶ、特殊なペロブスカイト構造をとる。具体的には、ビスマス酸化物の層が、2つのタンタル酸化物の層(ペロブスカイト構造)によって挟まれている。
SBTの強誘電体メモリ応用を想定したときにPZTに比べると有利な点は、動作電圧が低いことと、劣化が少ないこと、リーク電流が少ないことである。一方でPZTに比べると残留分極が小さい、結晶の作成温度が高い、という弱点があった。
SBTはPZTの限界を超えるメモリ材料という期待の下で、1990年代に盛んに研究された。しかし実際の製品応用例は、ごく一部にとどまっている。
2000年代に入ると、残留分極がPZTよりも大きな強誘電体材料としてビスマスフェライト(BFO:BiFeO3)が登場する。2006年3月に東京工業大学と富士通研究所、富士通の共同研究グループが、ビスマスフェライトにマンガン(Mn)を添加した強誘電性薄膜で、PZTの5倍と大きな残留分極を確認したと発表したのだ。
富士通は2006年の発表当時、90nm製造技術によるメモリを2011年までに実用化すると表明したものの、残念ながら実用化には至っていない。
(後編に続く)
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.