前編では無機化合物の強誘電体材料を紹介したが、有機化合物にも数多くの強誘電体材料が存在する。本稿では、有機化合物系強誘電体材料の代表格であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)や酸化ハフニウム系強誘電体について説明する。
前編では強誘電体(ferroelectric materials)の中で、圧電性セラミックス材料を中心に代表的な材料組成をご紹介した。後編となる今回は、圧電性セラミックス以外の強誘電体材料を解説する。
前編で紹介してきた強誘電体は全て無機化合物だった。強誘電体は無機化合物だけとは限らない。有機化合物にも、数多くの強誘電体材料が存在する。その代表は、フッ化ビニリデン(VDF:CH2CF2)の重合体(ポリマー)であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
PVDFは、そのままではふつうの誘電体フィルムである。ところがPVDFを一軸延伸して分極処理を実施すると、圧電性を有するようになることが発見された。これが1969年のことだ。その後、圧電性高分子のPVDFを詳しく調べた結果、強誘電性を備えていることが明らかになった。これが1979年のことである。
さらに、フッ化ビニリデン(VDF)とトリフロロエチレン(TrFE)の共重合体が、延伸処理を加えずとも強誘電体になることが分かった。この共重合体はPVDFよりも大きな残留分極を示す。このことから、強誘電体メモリへの応用が期待された。
高分子の強誘電体材料には、柔らかい、軽い、製造が安価、といった特徴がある。ただし現在のところ、高分子を使った強誘電体メモリは実用化されていない。
最後は本シリーズのテーマとなった「二酸化ハフニウム(HfO2)」である。金属のハフニウムを酸化したハフニウム酸化物は、高い誘電率を備える常誘電体絶縁膜として半導体デバイスに使われてきた。具体的には、金属ゲートのゲート絶縁膜やDRAMキャパシターの誘電膜などである。
このハフニウム酸化物が強誘電体になることが発見されたのは、2011年のことだ。二酸化ハフニウム(HfO2)に微量元素の添加処理と熱処理を加えると、強誘電性を備えるようになることが示された。さらに、処理条件によっては二酸化ハフニウムが反強誘電性を備えるようになることも分かってきた。
二酸化ハフニウム系強誘電体の詳細については、本シリーズで後ほど解説する予定である。ご期待されたい。
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