東京工業大学の菅野了次教授らの研究グループは2017年7月、全固体リチウムイオン電池の実用化を加速させる可能性があるという新たな固体電解質を発見したと発表した。
東京工業大学(東工大)物質理工学院応用化学系の菅野了次教授らの研究グループは2017年7月、高価なゲルマニウムを使用せず安価で汎用的な物質を用いて超イオン伝導特性を示す固体電解質材料を発見したと発表した。東工大では「全固体リチウムイオン電池(以下、全固体電池)の実用化を加速させる新たな固体電解質の発見」としている。
電気自動車やスマートフォンなどでの応用が期待されている全固体電池は、固体の電解質が現状のリチウムイオン電池に用いられる液体の電解質に比べ電気の伝導率(イオン伝導率)が低いため、出力が低いという課題を抱えていた。その中で、液体電解質に匹敵する12mScm−1というイオン伝導率を持つ固体電解質「Li10GeP2S12(LGPS:リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄)」が発見された。また、2016年にはイオン伝導率25mScm−1を示す「LiSiPSCl(リチウム・ケイ素・リン・硫黄・塩素)」も発見されている。ただ、超イオン伝導率を持つ固体電解質は、希少金属であるゲルマニウムが必要であったり、塩基(Cl)などを用いた特異な組成であったりした他、電気化学的に不安定という課題も抱えた。
今回、菅野氏らの研究グループが発見した固体電解質は、スズ(Sn)とケイ素(Si)を組成した「Li-Sn-Si-P-S(LSSPS):Li10.35[Sn0.27Si1.08]P1.65S12(Li3.45[Sn0.09Si0.36]P0.55S4)」で、イオン伝導率11mScm−1を示す超イオン伝導体だ。
従来の超イオン伝導特性を示す固体電解質に比べ、合成しやすく、熱安定性が高いという長所を持つ。大気下での安定性が高いこと、柔らかく、加工しやすいこと、電気化学的な安定性が高いといった長所も併せ持つ。さらにスズとケイ素の組み合わせたことで「広いLGPS相生成組成域を実現したため、新たな材料の発見も期待できる」(研究グループ)としている。
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