訪日外国人が年々増加する中、羽田空港の国際線旅客ターミナルは、誰もが使いやすい空港を目指して、ユニバーサルデザインの採用に積極的に取り組んできた。その一環として、NTTとパナソニックがそれぞれ開発した技術の実証実験を2015年末より行ってきたが、実際に利用客に使ってもらう公開実証をいよいよ開始した。
羽田空港の国際線旅客ターミナル(以下、国際線ターミナル)の利用客は、2016年の1年間で1500万人を超えた。2016年の訪日外客数が2400万人(参考:日本政府観光局)だったことを考えると、羽田空港の利用者がいかに多いかが分かるだろう。
国際線ターミナルを運営する東京国際空港ターミナル(TIAT:Tokyo International Air Terminal Corporation)は、あらゆる利用客にとって使いやすい空港を目指すべく、空港内設備でユニバーサルデザインの実現に積極的に取り組んできた。その一環として、TIATは、羽田空港の運営を手掛ける日本空港ビルデング、NTT、パナソニックとともに、2015年12月からICT(情報通信技術)を用いたユニバーサルデザインの実証実験と検証を行ってきた(関連記事:「おもてなしは最先端のユニバーサルデザインで」)。実証実験をしながらニーズを調査し、実証実験に協力してもらったユーザーからのフィードバックを基に個々の技術をブラッシュアップする、といった作業を繰り返した。
そして上記4社は2017年8月8日、実証実験をさらに1歩進め、公開実証を行うと発表した。
今回の公開実証で最も力を入れたものが、外国人旅行客を対象にした、移動経路情報の案内だ。実は、日本を訪れる外国人観光客が最も難しいと感じることの1つが、電車やバスなど、移動経路の情報の入手だという。交通網が複雑な上に、案内の情報もあちこちに分散していて、非常に分かりにくいとの声が多いという。
そこでパナソニックは、光を使って情報を発信する同社の技術「LinkRay」を応用した交通案内サイネージや多言語案内サインを開発した。LinkRayは、LEDの点滅パターンをデジタルデータ(ID信号)としてスマートフォンなどに送信し、受信した端末でID信号を読み解くことで、関連データを表示する技術である。
交通案内サイネージは、「ここに行けば、目的地までの最適な交通手段が1度で分かるようにする」ことを目指すもの。外国人観光客の宿泊数が多いホテルの所在地などの統計データを基に、東京や渋谷、六本木、浅草など主要な目的地10カ所について、電車、バス、タクシーを使った際の経路や運賃、所要時間などを表示してある。
専用アプリを起動したスマートフォンを目的地のところにかざすと、各交通手段がスマートフォンの画面に表示される。電車を使うならば「電車」をクリックすれば、経路案内の情報を入手できるようになっている。サイネージの左上に表示されている路線図にスマートフォンをかざせば、目的地を直接、入力することも可能だ。現時点では、日本語、英語、中国語(繁体字と簡体字)、韓国語に対応している。
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