中尾氏は説明会で、応用市場から見た半導体デバイスの技術動向や市場見通しについても触れた。これまで半導体デバイス需要をけん引してきたアプリケーションを見ると、2000〜2010年はPCとインターネットで、この時期における半導体ウエハー製造装置(WFE:Wafer Fab Equipment)市場の年平均額は255億米ドルであった。好不況時の差は80億米ドルと大きい。
2010〜2016年は、モバイル端末とソーシャルメディアが半導体デバイス需要をけん引したと分析する。この間のWFE市場は年平均額が324億米ドルで、好不況時の差は30億米ドルと振れ幅が小さくなった。今後はIoTや人工知能(AI)、自動運転など、半導体デバイスを消費する用途がさらに広がる。「WFE市場は続伸し、好不況時の差はより小さくなって安定成長を続ける」というシナリオを描く。
新たな応用市場に向けて、半導体デバイスの技術や製品も進化する。例えば、プロセッサは「x86」から「ARM SoC(System on Chip)」そして、GPU、「TPU(Tensor Processing Unit)」、新型ASIC」へ移行すると予測する。メモリは今後、アクセス速度についてDRAMとSSDのギャップを埋める新型メモリが登場するとみている。そのために、既存装置に新たな機能を追加するためのプロセスキットなどを用意していく。ストレージ装置はHDDから3次元(3D) NAND型フラッシュメモリ搭載装置に移行するとみられている。
中尾氏は、IoTなどによるデータ量の増加について、「Ciscoモデル」を引用して紹介した。これによると、建物や工場、監視カメラ、コネクテッドカーなどから生じる、あらゆるデータがネットワークを介してサーバに送られる。この膨大なデータを分析することで新たな価値を生み出す。2020年にはこれらのデータ量が100エクサバイト(1018バイト)に達すると予測されている。これに対して、人間が作り出すデータ量は全体の1%にすぎないという。
こうした中で、需要が指数関数的に伸びているのがNANDフラッシュである。特に、メモリセルアレイを3次元に積層して、記憶密度を向上させる3D NANDフラッシュを中心に大容量化が進む。2015年に32層、2016年に48層、2017年には64層の積層プロセスを適用した3D NANDフラッシュが登場するなど、新たな応用市場を見据えて開発競争は一段と激しさを増す。
3D NANDフラッシュの量産立ち上げに貢献しているのが、同社のエッチング装置「Centris Sym3」だ。2015年7月に発表した製品だが、全ての3D NANDフラッシュメーカーに採用されたという。出荷数は既に1000チャンバーを上回るなど、急速に市場へ広がった。
Centris Sym3は、チャンバー内のガスの流れや排気、温度管理などを最適化することで、エッチングによる副生成物の再付着を低減する。また、イオンエネルギーを最適に制御することで、アスペクト比が高い3D構造のパターン形成を可能としたことなどが、半導体メーカーから高い評価を受けている理由だという。
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