矢野経済研究所がマイクロLEDの市場調査結果を発表した。それによると、マイクロLEDはディスプレイを中心に採用が進み、その世界市場規模は2025年には45億8300万米ドルに達するという。
サイズが100μm以下と極めて小さく、フレキシブル基板上に実装すると、折り曲げても割れないマイクロLED。その市場調査結果を矢野経済研究所が2017年9月4日に発表した。それによると、2017年のマイクロLED世界市場規模は700万米ドルに達する見込みだ。同社はマイクロLED世界市場規模が2025年には、その約655倍となる45億8300万米ドルに拡大すると予測する。
矢野経済研究所の市場調査結果によると、マイクロLEDはディスプレイ向けを中心に市場の形成が進んでいる。先導するのはソニーであり、同社はマイクロLEDを採用した高画質ディスプレイシステムの販売を開始した。ソニーの他にはAppleも、2018年〜2019年に発売する予定のスマートウォッチ向けとして、マイクロLEDディスプレイの採用を試みている。
マイクロLEDディスプレイは、超小型のLEDをバックプレーンに実装し、チップそのものを画素として活用する技術だ。その開口率、解像度、輝度、視認性、効率、耐久性などは、現行のLCDや有機EL(OLED)ディスプレイを上回る。ディスプレイのサイズを問わず採用可能で、フレキシブルディスプレイなども実現できる。
そのため、多くのメーカーや研究機関が開発を進めている。だが、矢野経済研究所は「予測以上の速さでマイクロLED市場が拡大する可能性もある」と断った上で、「LCDやOLEDディスプレイの競争力が高いディスプレイ市場にマイクロLEDが参入するのは当面難しい」とする。
マイクロLEDはチップサイズの小ささゆえに、現行の製造工程では対応できないところが多い。大量生産に向けた製造技術や装備の開発はまだ十分に進んでおらず、生産性や歩留まりの向上、生産コストの削減など、解決すべき課題は山積みだ。マイクロLEDが現行技術と同じ土俵に上がるには、強いサプライチェーンの構築や製造工程の最適化も必要となる。
そういった事情を踏まえ、LCDやOLEDディスプレイでは対応が難しい100型以上の大型ディスプレイや、生産量が少ないスマートウォッチ向けディスプレイなど、ニッチな範囲からマイクロLEDの採用が始まると、矢野経済研究所は見ている。
2020年ごろには、車載用ヘッドランプ、Li-Fi(Light Fidelity)通信、スマート繊維、バイオ、医療機器などにも、マイクロLEDの応用が進む見込みだ。しかし、製造技術、コスト、安全性などの問題が解決するまで、それらが市場全体に占める比率は一部にとどまるという。
一方、ディスプレイ向けの採用は拡大していく見通しだ。矢野経済研究所は、2020年のマイクロLED世界市場規模を2億2400万米ドル、2025年の同市場規模を45億8300万米ドルと予測する。市場規模の算出は、マイクロLED光源と実装工程にかかるコストの推定に基づいている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.