また、長時間労働は、会社にとってもコスト的にメリットがあります。
一般的に、残業をさせれば残業代が発生しますので(ただし、管理職にさせれば定額制(使いホーダイプラン)になることが多い)、普通に考えれば残業させずに、残業代を支払わない方が、会社にはコストメリットとなるようにも思えます(下図)。
しかし、一般的に、「誰でもできる仕事を提供する会社」というものは存在しません。
一定の専門分野に秀でた会社(例:技術系の製造会社)においては、専門知識は人に依存しますので、それを、専門知識のない者にやらせると、逆にコスト高になるのです。
上記のケースでは、単純に普通の労働者と比べて、たった1.69倍以上の専門性がある労働者であれば、残業させて限界まで働かせた方が、会社にとってコストが安くなることになります*)。
*)もし私が、「他人の考えた発明について特許明細書を書け」と言われたら、通常の5倍以上の時間が必要になるはずです。
どんな会社であれ、専門性を持っているはずです。そして専門性を持っている以上、長時間労働は、会社にとって常に最適戦略なのです。
それでは、このような、「長時間労働を肯定するロジック」が山ほど成立する中にあって、政府はなぜ、「働き方改革」で、時短を推進したいと思うのかを、考えてみましょう。
当初、私は、政府が時短を進める理由は、若者の結婚率を上げて、子ども(労働者兼納税者)を量産させる体制を進めるためだと思っていました(その計算のためのシミュレーションプログラムまで作りました)が、私のこの仮説は、このページのグラフで頓挫しました。
ひと言で言うと、「裕福な国になると出生率は必ず低下する」という事実が、このデータから明らかであったからです。
さらに、ドイツとフランスは、その出生率において大きな差があるのにもかかわらず、両国ともに時短の成果において世界トップクラスです。
つまり、「時間が余りさえすれば(恋愛して、結婚して、SEXして)子どもを作るはず」という仮説は、棄却せざるを得なかったのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.