最後に、この政府の主導する「時短」を妨害する犯人探しをしてみましょう。
私、毎日オフィスから退社する時に気が付くのですが、基本的に深夜まで働いている人間というのは、大体決まっていて、固定されたメンバーで構成されています*)。
*)なぜ、江端はそのメンバーを確認できるのか、ということについてはスルーしてください。
ただ、そのメンバーは労働時間が長いというよりは、労働時間帯が違うだけなのです。つまり、「朝遅くて、夜遅い」労働で、パフォーマンスを発揮できるのです(多分)。「時短」を妨害しているわけではありません(きちっと朝遅くに出社しているのですから、責められる筋合いはありません)。
全体としては、どのようなタイプの人間が、時短を妨害しているかについては前述の「経済財政白書」の付録に、興味深いデータがあったので、それをグラフ化してみました。
これは重回帰計算の係数を算出したものであり、簡単に言うと、「時短」を妨害の度合いを (言い方が悪いけど)を示しているものです(参考ページ:内閣府のページに移行します)。
これらのデータから読み取れることは、時短を妨害するタイプの人間は、「年寄り」「フルタイムの就労形態」「比較的大きな会社に勤務」「製造業、運輸業」そして「男」が多いということが分かります。
その中でも、正規社員、非正規社員に関わらず、フルタイム(8時間勤務)の就業形態の人の長時間労働の傾向が、ズバ抜けて悪い(2.5時間)です。
このデータは景気と関係なく計測されたデータから算出されていますので、固定的な傾向として認めても問題ありません。
この重回帰計算式は、一つの線形式として全ての係数を一斉に導き出してしている訳ではないと思うのですが(多分)、ざっくり感を得たくて、自分のケースを使い、一つの線形式として、計算を強行してみました。
うーん、これは、なかなか的を得ているかもしれない、と思いました。
ただ、この労働時間を毎日続けているとしたら、私も36協定を軽く突破してしまいますし、そこまで働いているとは実感できないので、やはり計算方法に間違いがあるのだと思います。
まあ、上のグラフは「時短の妨害因子」として使って頂ければ良いかな、と思っています。
この結果をまとめますと、私たちは私たちだけの意志では労働時間を決定できない。私たちの労働時間を決定しているモノは、その仕事の環境にある ―― ということです。
そして、このような仕事の環境を労働者や会社が覆すことは、絶望的に難しいのです。
ですから、「働き方改革」を主導している政府の皆さまにおいては、私から次のようにお願いを申し上げたいと思います。
この絶望的な「時短」へのアプローチを(立法化や行政命令なしで)労働者や会社の自助努力のみでなんとかしろ ――などと言われた日には、私は、本気で首相官邸に殴り込みに行くぞ
―― と。
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