エモーションドリブンサービスモデルは、感情というあいまいで不確かなものを使用するため、いくつかの特徴がある。
はじめに、エモーションセンシングの対象となるユーザーであるが、「人間」には限らない。感情を持つ生物全般が対象となる。特に、会話ができない乳幼児やペットなどの感情は、一般的には識別が難しいと考えられているため、それらの感情を識別できるシステムは有効に機能する。実際に、ペットの感情を認識するサービスについては、既にサービス化されている事例もある。
次にエモーションを識別するためのエモーションキャッチセンサーのデータ取得方法であるが、単にセンシングすればよいというものではない。感情情報を収集する必要があるため、ユースケースに合わせ、センシングする対象が感情を表す場面を正しくセンシングする必要がある。感情を表しにくい状況でのセンシング結果は、意味のない認識結果になる可能性が高い。例えば、人間は会話ができる相手がいる場合に感情を表しやすいため、コミュニケーションロボットを活用し、会話をしながらのエモーションセンシングは非常に有用である。
最後に、感情識別の精度についてだが、人間の感情は非常に複雑で不確かであり、かつ切り替わりが早いため、認識を誤る可能性がある。そのため、エモーションセンシングは高い識別精度を求めるシステムには不向きであり、システムの補助的な利用や多少の誤識別が許容されるシステムでの利用が想定される。しかしながら、ユースケースを絞り込むことや、複数のセンサーを使用し組み合わせて識別することにより、識別精度を高めることは可能である。
さらに、エモーションをトリガー(インプット)とするエモーションドリブンサービスモデルとは視点が異なるが、感情を誘導するというアウトプットのサービスを実現すると価値の高いサービスを提供できる可能性がある。感情を誘導するサービスを検討する場合には、具体的なユースケースを特定することと、実際にサービス提供後のユーザーの感情をセンシングし、フィードバックしていくことでサービスの質を向上させることが必要となる。
例えば、人間は「Fun(楽しい、面白い)」を感じれば、行動が変わるといわれており、『The Fun Theory.com』ではさまざまなアイデアが考えられている*5)。
*5)参考URL:http://www.thefuntheory.com/
しかしながら、人間は同じことの繰り返しでは飽きてしまうため、最初は「Fun」と思ったことでも、繰り返すと「Fun」を感じなくなってくる。そのため、飽きてきたことを検出すれば、新しい「Fun」を生み出す仕掛けが必要になる。
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