毎回、調査会社IHS Markit Technologyのアナリストがエレクトロニクス産業の未来を予測する本連載。今回から数回にわたり、アナリスト5人による2018年を予測する座談会の模様を紹介する。まずは、2018年を占うために、2017年を振り返ってもらった。
2018年は、エレクトロニクス産業にとって、どのような1年になるだろうか――。
IHS Markit Technologyのアナリストがエレクトロニクス産業の未来を予測している連載「IHSアナリスト『未来展望』」。今回から数回にわたって、いつもとは少し趣向を変えて、アナリスト5人による「2018年のエレクトロニクス産業」をテーマにした座談会の模様を紹介していく。
“座談会編”の第1回となる今回は、2018年を占うためにも、2017年のエレクトロニクス産業を、アナリストそれぞれの立場から振り返る。
なお、座談会に参加したアナリストは、次の5人だ。
EE Times Japan編集部(以下、EETJ) 2017年を振り返っていただけますか。
南川明氏 2017年をひと言で表せば「メモリの年」だった。
メモリが足りず、価格が上がり、少しバブルのような様相を呈した。それにより、半導体市場全体は、絶好調の1年となった。
EETJ メモリ高騰の要因はどのように分析されていますか。
南川氏 需給両面で、メモリ価格を押し上げた要因があった。需要面では、スマートフォン市場の成長に加え、SSDが急速に普及し始めたことが大きかった。ここまでのSSDの普及は1年前には、想像できなかった。
供給面では、特に3次元構造のNAND型フラッシュメモリ(以下、3D NAND)を中心に、歩留りが思うように上がらなかったことが挙げられる。
こうした要因により、需要増大と供給不足が重なりメモリが不足し、メモリ価格は前年比20%以上も上昇したと考えている。仮に、価格上昇がなければ、メモリ需要の成長は10〜15%程度だったとみている。価格の高騰があったので2017年のメモリ市場は、40%以上もの急成長を果たしたとみている。
EETJ メモリメーカーは軒並み売上高を急拡大させました。
杉山和弘氏 メモリ高騰を受けて、20年以上にわたりIntel(インテル)が守り続けてきた半導体メーカー売上高ランキングの首位が、DRAM、NANDフラッシュを手掛けるSamsung Electronics(サムスン電子)になったというのも、2017年の大きな出来事だった。
この首位交代は、個人的には、半導体技術のけん引役が、PC向けプロセッサやテレビ向けデバイスから、携帯電話機/スマートフォン向けデバイスに変わったことを印象付けるものになった。
大庭光恵氏 Intelの売上高ランキングでの2位転落は、情報通信という立場からは、PCなどエンド端末側からサーバなどインフラ側に主役が変わったことも要因の1つではと考えている。2017年は、サーバ、データセンターという情報通信インフラ側の半導体需要が大きくなる中で、NVIDIAが成長を果たしたことが印象的で、GPUサーバが一般的になった1年だった。
そうした中で、2017年11月には、IntelとAMDが、GPU、並列プロセッシング分野で提携を結んだ。この提携は、これまでのPC、x86サーバの王者が、新たな技術に対し本腰を入れなければ、既存プレーヤーとしての地位さえも危ぶまれるという危機感の表れといえる。
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