EETJ NVIDIAは自動車業界でも大きな話題になりました。
杉山氏 自動車は100年に1度の変革期といわれ半導体需要も拡大している。その中で、NVIDIAをはじめGoogle、Intelなど自動車業界のサプライチェーンに存在しなかった新たなプレーヤーの参入が目立った1年だった。携帯電話機からスマートフォンに変わった時と同じように、プレーヤーが変わりつつある。自動車分野も、IoT(モノのインターネット)化が進んでいるといえるだろう。
棚町悟郎氏 その通りで、アナリストとして10年以上にわたり自動車業界を見てきたが、2017年は自動車分野への半導体メーカーの新たな参入が相次いだ年だった。
IntelによるMobileyeの買収もその1つ。加えて、NXP Semiconductorsを買収するQualcommをBroadcomが買収しようとするという動きは、想定外で驚いた。Intelは自動運転領域で、QualcommやBroadcomはコネクテッドカー領域で、自動車市場の成長に乗っかりたいという目的。場合に寄れば、自動車市場の成長に乗っかるのではなく、成長を支える、引っ張るという可能性もあるだろう。
李根秀氏 自動車業界のサプライチェーンに存在しなかった新たなプレーヤーではNVIDIAだけでなく、イメージセンサーを展開するソニーも2017年、台頭した。
2017年にはソニーは自動車用イメージセンサー分野でのビジネスを活発に行った。商品の発表や展示会などでも注目を集め、持ち前の技術力を駆使、デンソーやBoschなどのティア1サプライヤーにも採用が決まった。今後、ソニーは、さらに技術力を生かしたイメージセンサーを投入し、さらに躍進していくだろう。
EETJ イメージセンサーにも関係しますが、2017年はスマートフォン市場成長にも陰りがみえました。
李氏 2017年はAppleの「iPhone 8」の販売が不振だった。この理由は「iPhone X」への期待から起きた買い控えが原因であるが、2018年に入ってからは「iPhone X」の販売が目標に届いていない問題も報告されている。iPhoneの販売の勢いに衰えが見えてきたことで、スマートフォン市場の成熟感がより一層、鮮明になったと感じる。
スマートフォン自体は、人の生活に欠かせない存在となり、販売台数が減少するようなことはないだろう。しかし、スマートフォンは、ハードウェアとしての進化が止まった。そのため、今後、ハードウェアはコストダウン競争に陥り、デバイスメーカーは、コスト圧力を跳ね返すだけの技術革新がなければ、苦境に陥ることになる。自動車市場で台頭するソニーのイメージセンサー事業にとっても、スマートフォン市場の成熟化は不安材料であることは間違いない。
その一方で、中国がイメージセンサーの製造に乗り出している。このことは、イメージセンサー以外のデバイスにも当てはまる。高い所から低い所へ流れるのは、常であり、仕方ないことではあるが――。
EETJ 半導体デバイス技術の変化という面で、2017年に印象に残ったことはありますか。
大庭氏 サーバなどインフラ領域で、ハイパフォーマンスの並列処理が求められていく中で、これまで、せいぜい20〜30mm角サイズだったダイサイズが、800〜1000mm角サイズに大型化したことは印象的。今後も、新たな並列処理デバイスの実現に向け、いろいろな開発が成されていくことを予感させた。
南川氏 チップ、ダイの大型化もそうだが、これまで半導体の進化の中心だった微細化がなかなか進まなくなり、これまでとは異なる方向性のテクノロジーが登場してきた年だった。3D NANDについても、2017年が本格的な普及が始まった年と言える。スマートフォン用プロセッサについても、CPU+GPU+アクセラレータという構成になった最初の年になった。
繰り返しになるが、CPU主体から、GPUによる並列処理へと技術トレンドが変わった年になった。
(つづく)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.