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NECら、熱電変換素子用の材料開発にAI技術適用効率を約1年で100倍向上

NECと東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究グループは、AI(人工知能)技術んどを適用して開発した新材料を用いて、スピン流熱電変換素子の性能を、約1年で100倍向上させることに成功した。

» 2018年02月14日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

材料開発用AI技術群とコンビナトリアル型データ取得基盤を適用

 NECと東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の齊藤英治教授らによる研究グループは2018年2月、AI(人工知能)技術などを適用して開発した新材料を用い、スピン流熱電変換素子の性能を約1年で100倍向上させることに成功したと発表した。

 研究グループは、スピン流を用いた熱電変換素子の開発を共同で行っている。今回は効果的に材料データを解析する材料開発用AI技術と、さまざまな種類の固体材料データを一括して取得する技術を新たに開発した。開発したこれらの技術をスピン流熱電変換材料の開発に適用したところ、大きな効果が得られることが分かった。

 NECが独自開発した「材料開発用AI技術」は、大きく3つに分かれている。コンビナトリアル手法で取得した大量のデータを高速で処理し分類するための機械学習技術「コンビナトリアルデータ解析用AI技術」、大量の材料データを評価するための機械学習技術「物性モデル構築用AI技術」、大量の材料候補の中から効率的に目的の材料を探すための機械学習技術「材料スクリーニング用AI技術」である。これらの技術を用いることで、開発期間などマテリアルズインフォマティクス(MI)を活用した材料開発における従来の課題を解決することが可能だという。

 大量データの一括評価と取得に向けて開発したのは、「コンビナトリアル型データ取得基盤」である。独自の薄膜材料作製/特性評価技術によって取得した実験データと、材料物性シミュレーションで取得した理論計算データを組み合わせて、十分な質と量を備えたデータ群を構築するための技術である。

組成分散試料の一例。1つの基板上に1000種類以上の異なる組成を持つ薄膜材料を1回の成膜プロセスで作製。評価用サンプル品には、測定の目的に応じた電極パッドなどがパターニングされている。独自に開発した自動評価システムを用いて、効率的に実験データを取得することができる 出典:NEC他

 研究グループは今回、開発したコンビナトリアル型データ取得基盤と材料開発用AI技術群を、新しい白金(Pt)系合金の探索に適用した。この結果、「Pt系合金が磁性体になっていること」「合金に含まれるPt自体がスピン分極していることが重要であること」など、さまざまな知見が明らかとなった。

開発した技術を新しい白金(Pt)系合金の探索に適用したところ、さまざまな知見が明らかとなった 出典:NEC他

 そこで、Ptのスピン分極を強化した新しい合金「CoPtN」を合成し、その特性を評価した。この結果から、新たな合金は従来のPt合金に比べて熱電変換効率が約100倍高い特性となることが分かった。開発期間も約1年間で済んだという。

新しい合金「CoPtN」を合成しその特性を評価した 出典:NEC他

 研究グループは今後も、AIを活用した材料探索を進めていく。これにより、スピン流熱電変換素子の熱電変換効率をさらに向上させていくとともに、新しい低コスト材料の開発などに取り組む。

 NECは今回の研究成果を、「nano tech 2018第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2018年2月14〜16日、東京ビッグサイト)で紹介する。

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