東京大学と大日本印刷は、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイを共同開発した。スキンセンサーなどと組み合わせることで手軽に健康管理が行える。在宅ヘルスケアなどへの応用を見込んでいる。
東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授を中心とした研究グループは2018年2月18日、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイを、大日本印刷と共同で開発したと発表した。スキンセンサーとスキンディスプレイを一体化したシステムは、皮膚に密着させることで生体信号を測定し、その情報を表示させることができる。このため、子供や高齢者でも容易に利用することが可能となる。
開発したスキンディスプレイは、薄型軽量で伸縮自在なゴムシートに16×24個のマイクロLEDが等間隔で埋め込まれている。このシートの厚みは約1mmで、繰り返し45%伸縮させても電気的、機械的な特性を維持することができる。皮膚に直接貼り付けても体の動きを妨げることがないよう工夫されており、装着時の負担を軽減できるという。
ディスプレイとしての解像度は、最大に伸ばした状態で4mm、最も縮めた状態で2.4mm。実効面積はそれぞれ64×96mmと、38×58mmである。マイクロLED単体の大きさは1×0.5mmとなっている。発光波長は630nmで赤色、駆動電圧は2V、消費電力は最大13.8mWである。
機械的に極めて高い耐久性を実現したのも今回の特長である。LEDなど硬い電子部品と伸縮性のある柔らかい配線素材を用いると、その接合部分に大きな応力が発生し、故障の原因となることもあった。今回は、応力の集中を避ける構造としたことで、これまでの課題を解決した。また、伸縮性ある配線はスクリーン印刷法による銀配線技術を、マイクロLED実装にはマウンターとはんだペーストを用いるなど、実績のある技術を活用することで、高い量産性とコストの低減を可能としている。
研究グループは、ナノメッシュ電極と無線モジュールを組み合わせたスキンセンサーも既に開発している。直接皮膚に貼り付けて、心電波形などを測定することができる。スキンディスプレイと一体化したシステムは、測定した心電波形を動画として表示させることが可能となる。このため、生体信号の計測から情報表示まで、被測定者に負担を強いることなく、自然な形で健康管理を行うことができる。今回の研究では、メモリに保存した心電波形の動画をスキンディスプレイに表示させた。
共同研究の成果について大日本印刷は、3年以内に実用化を目指す考えだ。そのために今後は、デバイス構造を最適化し信頼性のさらなる向上や、製造プロセス開発による高集積化、大面積化などに取り組む計画である。
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