新エネルギー・産業技術総合開発機構と次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合は、印刷技術を用いて圧力と温度を同時に多点検出できるフレキシブルシート型センサーを開発した。他のセンサーと組み合わせることができれば、将来は人間の皮膚感覚を備えたロボットスキンを実現することも可能となる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合(JAPERA)は2017年2月、印刷技術を用いて圧力と温度を同時に多点検出できるフレキシブルシート型センサーを開発したと発表した。摩擦検知など他のセンサーと組み合わせることができれば、将来は人の皮膚感覚を備えたロボットスキンを実現することも可能になるとみている。
JAPERAは、NEDOプロジェクト(実施期間は2011〜2018年度)において、高度TFTアレイ印刷製造技術の開発に取り組み、全印刷連続一貫生産ラインによるフレキシブルTFTアレイシートの製造工程を確立してきた。これにより、印刷技術を用いて大面積で薄型、軽量のフレキシブルデバイス製造を可能にした。
今回は、このフレキシブルTFTアレイシート上に、感圧層と感温層をパターン印刷し、圧力と温度を同時に多点検出できるシート型センサーを開発した。このセンサーは、ゲート電極やゲート絶縁膜、ソース及びドレイン電極、有機半導体からなるTFT上に中間層を設け、さらに画素電極と感圧層あるいは、画素電極と感温層を積層した構造となっている。
圧力や温度の変化によって感圧層や感温層の抵抗は変わる。これらの層に直列接続したTFTのゲート線を走査しながらソース電流を読み出し、その変化量から圧力や温度の内面分布を検出する仕組みだ。
圧力と温度を同時に多点検出できるフレキシブルシート型センサーを実現するため、研究グループでは新たに3つの技術を開発した。
その1つは「感圧インク」である。スクリーン印刷性に優れ、TFTの特性にマッチした抵抗値を実現した。2つ目は「感温インク印刷方法」。東京大学の染谷研究室で開発されたポリマーPTCをベースに、検出温度範囲の拡張や高精度のパターン形成を可能にする技術である。3つ目は「グラビアオフセットAgインク印刷方法」。極めて精細な画素電極を形成することが可能となり、TFT特性を劣化させることがないという。
これらの技術を用いてフレキシブルシート型センサーを試作した。試作品の厚みは約0.3mmで柔軟性が高いことを確認した。検出エリアは173×260mmとほぼB5サイズで、この中に144×216の素子を形成した。解像度は1.2mmピッチで、検出可能な圧力範囲は0〜500kPa、温度範囲は20〜50℃である。重さや温度が異なる液体の入った複数個の容器を、シート型センサー上に置いて測定したところ、容器の位置や重さ、温度を同時に検出できることを確認した。
人間が皮膚の2点に加えられた刺激を2点と感じる最小距離は、値が最も小さい指先で2〜3mmとされている。試作したフレキシブルシート型センサーの性能は、これに匹敵する。今回は、圧力と温度を検出できるセンサーをシート状に作り込んだ。研究グループは今後、摩擦などを検知できる物理センサーやバイオセンサーなどを、同一シート上に作り込むことができれば、人間と同等の皮膚感覚を持つ高度なセンサーを実現することが可能になるとみている。
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