エレクトロニクス製品向け先端材料は、電動化や自動運転に向けた取り組みが本格化する車載システムや、5G(第5世代移動通信)、IoT(モノのインターネット)などによって、今後も市場拡大が続く見通しだ。
富士キメラ総研は2018年2月16日、エレクトロニクス製品向け先端材料の世界市場を調査し、その結果を発表した。車載用途などで需要拡大が期待されるノイズ抑制シートやミリ波レーダー対応熱転写箔などの動向に注目する。
富士キメラ総研は、次世代技術として注目するキーワードとして、「HV/EV」「ADAS(先進運転支援システム)」「5G(第5世代移動通信)」「ウェアラブル」「IoT(モノのインターネット)」などを挙げ、エレクトロニクス製品向け先端材料市場について調査した。
エレクトロニクス製品向け先端材料の中で、富士キメラ総研が注目したのが、「ノイズ抑制シート」や「ミリ波レーダー対応熱転写箔」「OLED(有機LE)用封止材」「放熱メタル基板と放熱樹脂基板」および、「フォトレジスト」の5市場である。
ノイズ抑制シートには、複合磁性シートや焼結フェライトシートがある。これらはRFIDやNFC、ワイヤレス充電などにおける伝送効率の改善などに用いられる。焼結フェライトシートはkHz帯〜MHz帯のノイズ対策に適している。スマートフォンがワイヤレス充電に対応したことで市場が拡大した。今後はEVやPHVでもワイヤレス充電が採用される見通しである。複合磁性シートは5MHz〜GHz帯のノイズ対策に適している。ADASへの対応など車載用途での需要拡大が見込まれている。
こうしたことから、ノイズ抑制シートの市場は、2017年見込みの430億円に対し、2021年は724億円と予測した。
ミリ波レーダー対応熱転写箔は、車体正面のエンブレムに用いる製品が対象となる。エンブレムは一般的にメッキなどで金属光沢が施されており、エンブレム内側に搭載された衝突防止用ミリ波レーダーは透過しない。このためメッキに代えて、ミリ波レーダーが透過するインジウムなどを蒸着させた熱転写箔が用いられるという。
車載用ミリ波レーダーは欧州を中心に市場が拡大する。今後は日本や米国、さらには中国などでも需要拡大が見込まれている。このためミリ波レーダー対応熱転写箔の市場は、2017年見込みの40億円に対して、2021年には74億円と予測した。
OLED用封止材は、大型AMOLED(アクティブマトリックス式OLED)やフレキシブル照明に用いられるシート状と、中小型AMOLEDやPMOLED(パッシブマトリックス式OLED)、リジッド照明に用いられるペースト状の製品がある。今後は、大画面TV向け大型AMOLEDなどの量産計画もあることから、OLED用封止材市場は2017年見込みの259億円に対して、2021年は548億円と予測した。
放熱基板は放熱性や耐熱性を向上させたもので、銅やアルミをベースとした放熱メタル基板と、エポキシ系など樹脂ベースの放熱樹脂基板を調査対象とした。数量ベースで全体の約8割を占める放熱樹脂基板は、発熱量が比較的小さいLED照明などの用途に採用されている。一方、金額ベースで約8割を占める放熱メタル基板は、車載用や産業機器向けなどで需要が伸びる。
こうした動きから、今後は放熱樹脂基板が微増にとどまり、放熱メタル基板は需要が拡大する見通しだ。この結果2017年見込みの206億円に対して、2021年は247億円と予測した。
フォトレジストは、半導体素子のパターン形成などに用いる感光性材料で、g線/i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、EUVレジストを調査対象とした。g線/i線レジストは、IoTの進展やHV/EVの普及などから、センサーやパワーデバイスの製造に向けて需要が広がる。ArFレジストはマルチパターニングによる工程数の増加などから使用量が増える見通しだ。この結果、フォトレジスト市場は、2017年見込みの1211億円に対して、2021年の市場は1500億円と予測した。
富士キメラ総研は、2017年10月〜2018年1月に、専門調査委員によるヒアリングおよび、関連文献やデータベースを活用して調査・分析を行った。調査では、半導体分野8品目、実装・部品分野16品目、LCD分野4品目に加えて、OLED分野11品目、電池分野4品目、車載分野5品目の、合計6分野48品目の市場を分析。「2018年 エレクトロニクス先端材料の現状と将来展望」として、2021年までの予測を報告書にまとめた。
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