続いて講演のアウトライン(目次)が示された。アウトラインは「ショートリーチ(短距離)の光接続技術のロードマップ」「シリコンフォトニクス・プラットフォーム」「CMOS-シリコンフォトニクス・トランシーバー」「研究レベルのデバイス」「まとめと結論」となっている。
講演の本論に入る前に、基本的な事柄をおさらいしておきたい。以下の内容は講演ではふれられておらず、いわば前提となっている。
光を使った通信や相互接続などには、いくつかの特徴がある。光は電磁干渉を受けないので、無線雑音に強い。光ファイバーを伝送媒体とする光ファイバー通信では一般に、伝送速度が電気通信(銅配線や銅ケーブルを使った通信)よりも高く、また信号を伝送可能な距離が長い。
光には真っすぐ進む(直進性)という基本的な性質がある。このため、2点間の信号伝送には、光を遮るものをまったく配置せずに空間を伝送するか、あるいは、何らかの構造(例えば光ファイバー)によって光を閉じ込めて伝送経路を確保するかのどちらかになる。一般的なのは光ファイバー伝送である。
光ファイバー伝送では、電力を送信できない。このため長距離の光ファイバーケーブルでは、光ファイバーの他に銅線を内蔵して銅線によって電力を供給しているものがある。この電力は、中継器で信号を整形したり、増幅したりするために使われる。
光ファイバー伝送の世界では、光トランシーバーを伝送距離の違いによって分類することがある。例えばPOS(Packet over SONET/SDH)では、「ショートリーチ(SR: Short Reach)」「インターミディエイトリーチ(IR: Intermediate Reach)」「ロングリーチ(LR: Long Reach)」といった表現で伝送距離を分類する。SRは短距離、IRは中距離、LRは長距離と翻訳されることが多い。SRは最大2km、IRは最大40km、LRは最大80kmである。このほか「ベリーショートリーチ(VSR:Very Short Rearch)」と呼ぶ伝送距離が最大300mの光トランシーバーもある。
また10Gビット/秒の光イーサネットでは、「ショートレンジ(SR: Short Range)」「ロングレンジ(LR: Long Range)」「エクステンデッドレンジ(ER:Extended Range)」「ZR」といった表現で伝送距離を分類する。伝送距離はSRが最大300m、LRが最大10km、ERが最大40km、ZRが最大80kmとなっている。
次回は、データセンターにおける光ファイバー伝送と銅ケーブル伝送について、実態を見ていく予定である。
(次回に続く)
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