米国の新興企業MATRIX Industriesが2018年4月12日に日本で発売したスマートウォッチ。何がすごいって、「自分の体温で発電しちゃう」のだ。
体温で発電するスマートウォッチが日本市場に上陸した。米国の新興企業MATRIX Industriesが開発した「MATRIX PowerWatch(マトリックス・パワーウォッチ)」だ。
MATRIX PowerWatchの最大の特長は、熱電変換によって発電した電気で駆動する点だろう。具体的には、スマートウォッチ本体の表面温度と、体温(手首の皮膚の表面温度)との温度差を電圧に変換する。それを専用の昇圧コンバーター(ASIC)で昇圧し、内蔵のリチウムイオン電池を充電してスマートウォッチを駆動する仕組みだ。
MATRIX IndustriesのCEO(最高経営責任者)であるAkram Boukai氏は、2018年4月11日に東京都内で開催された記者説明会で、「人の体から発せられる熱量は、100W分に相当するといわれている。アスリートでは、それが1kW相当に達することもあるとされる。われわれは、人の体を使った発電によってセンサーやスマートウォッチなどの駆動が可能だと考えた」と語る。
MATRIX IndustriesでCTO(最高技術責任者)を務めるDouglas Tham氏は、MATRIX PowerWatchでコアとなる技術は3つあると述べる。熱電変換素子(熱電ジェネレーター:TEG(Thermoelectric Generator))、ASIC、そして熱設計だ。
TEGには複数の化合物から製造されていて、TEGの大きさを変えることでミリワットからキロワットまでのレベルの発電に対応できるとする。
ASICの開発にも注力した。Tham氏によれば、汎用の昇圧コンバーターとTEGを組み合わせた場合、70%もの熱損失が発生してしまうという。そこでMATRIX Industriesは、TEGの熱変換率を最大限に引き出すために専用の昇圧コンバーターをASICとして開発したのだ。MATRIX PowerWatchの場合、TEGによって生成される電圧はわずか20mWだが、ASICでそれを3〜5Vに昇圧するという。さらに、「決してあなどってはいけない」(同氏)のが熱設計だ。TEGと専用ASICを使い、変換効率が最も高くなるように熱設計を行っている。
Boukai氏によれば、MATRIX PowerWatchでは、常時発電できるよう、スマートウォッチ本体の表面温度と皮膚温度の差が常に1℃以上になるように設計されていて、変換効率は1%だという。「人体の発熱が100W相当と仮定すると、1%変換できればMATRIX PowerWatchを駆動するには十分だと考えている。もちろん、MATRIX PowerWatchではTEGの大きさに制約があるからこの効率なのであって、TEGのサイズが大きければ効率は上がる」(Boukai氏)
MATRIX PowerWatchはシンプルなスマートウォッチで、消費カロリーの計測、歩数計、睡眠量計の機能を備えている他、肌の表面の温度(体温ではない)も表示できるという。Bluetooth Low Energyを介してAndroid端末とiOS端末に接続する。日本ではビーラボが販売元となり、2018年4月12日から販売を開始する。ベゼルがブラックとシルバーの2種類があり、本体価格はシルバーが3万2800円、ブラックが3万7800円。
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