上記の「ドローンの密集度」および、「航路の定義」に基づき、機器の制御・制御用付加情報・アプリケーションの稼働に必要な情報、映像情報の通信状態を確保できれば、ドローンの利活用の実現性が上るとみている。それぞれ収集できるデータは制御系データとアプリ系データとなる。
異なる通信バンドと複数機器(ドローン数基)の連携では、低い周波数の通信技術ほど帯域は狭くなるが、より遠くまで、かつ物陰でも届くようになる。
そのため、制御系の通信に関しては、低い周波数の無線の使用を優先する、アプリ関連などデータ量の大きいデータに関しては、帯域が足りない場合には、通信をせずに蓄積するなどの処理を検討する、通信が切断した時の基本動作として、強制帰還や緊急着陸などの基本となる考え方を指針として整理した(図8参照)
アプリ系データと制御系データを分けて考える手法は、通信業界では、「コントロールプレーン」と「アプリケーションプレーン/データ通信プレーン」に分ける考え方がある。
その「コントロールプレーン」と「アプリケーションプレーン/データ通信プレーン」という2分割よりも、さらに細かく分ける考え方もある。例えば、テレビ会議などに用いられるプロトコル「SIP」(Session Initiation Protocol)だ。アプリ系データ自体も、映像、音声、制御に分離して扱い、帯域に応じて、通信するデータを選択し、通信が途切れるまで制御系データの通信を確保するという考え方だ。そして通信が切れた場合の処理も、再接続されるように規定されている(図9参照)。このような複数の通信帯域をくみあわせてつかうSIPの“アプリからの制御”という考え方とあわせて、図8に出てきた複数の通信帯域(バンド)を“通信として組み合わせる”考え方も標準が登場してきていて、その1つがWi-Fi Agile Multibandである。
MCPCとJASAは、これまで検討してきたこのようなドローンに適した通信を、横須賀リサーチパーク(YRP)で実証している。次は離島(海上含む)での実証に発展させることを目指して、検証仕様をMCPCとJASAの合同で作成している(図10、図11参照)
さらに今後は、JUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)、BWA(ブロードバンドワイヤレスフォーラム)、ドローン社会共創協議会、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、IPA(情報処理通信機構)などとも連携の枠組みを広げ、ドローンに適した通信の検討をさらに進めていきたいと考えている。
【著:小林佳和/モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC) ワイヤレスシステム活用委員会 委員長】
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