またBenson氏は、「Intelが、『Joule』や『Galileo』、『Edison』、『Arduino 101』などを含む、小型のArduino開発ボード製品を終息させると発表したことで、市場にぽっかりと穴が開いてしまうような状況になっている」と述べる。
「Intelが数種類のArduino製品を手掛けていた当時、これらの製品の採用に対して、もっと関心が高かった。処理能力が高かったからだ。だがそうした時期が過ぎると、今度は、(IoT向けなどで)より処理能力が低いものに目が向けられるようになった」(同氏)
Arts氏をはじめとする多くの人々は、「Arduinoを使用する製品が急速に拡張していくことは、ないのではないか。その主な要因は、IoTだ。ほとんどのIoTデバイスにとって、『Atmel AVR』などの8ビットマイコンやArmの32ビットマイコンの性能は、十分過ぎるくらいだからだ」と述べている。
Arts氏は、「Arduinoは、売上高に関する具体的な数字を明らかにしていないが、現在も使用されているArduinoボードの数は数百万個に達する他、Arduinoが直接販売しているわけではない製品も、同様に数百万個に上るとみられる。ArduinoのWebサイト『arduino.cc』は、1年間当たりのユニークビジター数が3000万で、月間ページビュー数は2300万ページに上ることから、Arduinoプラットフォームの人気が高いことが分かる」と述べる。
同氏は、特定の数字については明らかにしていないが、「メイカーズや専門の開発メーカー向けに、コードの記述や、コンテンツへのアクセス、ボードの設定、プロジェクトの共有などをサポートすることが可能な、新しい統合型オンラインプラットフォーム『Arduino Create』のユーザー数は、現在かなりの数に上る」と付け加えた。
「こういったユーザーは、“Lチカ(LEDの点滅)”させようとしているわけではない。彼らが必要としているのは、IoTデバイスの開発や、試作品の領域を超える最終製品を本気で実現するために、クラウドやソフトウェア関連の専門的なサービスだ」(同氏)
Arts氏は、「IoTの台頭により、自宅のガレージや研究開発機関で作業している多くのユーザーが、試作品を作りたいという意欲を、Arduinoボードや開発ツールによって実現しようとしている」と続ける。
「市場参入へのハードルは、ますます低くなっている。ハードウェアおよびソフトウェア分野では、Arduinoへの注目が高まる一方だ。さらに、3000万人ものユーザーがいるコミュニティーや、迅速な市場参入を可能にするツールなどの存在によって、モノ作りがますます容易になってきている」(Arts氏)
最終的には多くのプロジェクトにおいて、性能やフォームファクタの向上を実現していくために、Arduinoから、ASICやカスタムボードなど他のソリューションに移行していくだろう。しかし、Microchip Technologyのシニアスタッフエンジニアであり、非営利団体MyMentorTreeのCIO(Chief Innovation Officer)を務めるBob Martin氏によると、小型化を実現した新型Arduinoボード「Arduino MKR」や「Arduino Pro Mini」「Arduino Nano」など、製品のレベルを中程度に引き上げたい場合に適したボードなども登場しているという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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