アンリツと京都大学の研究グループは、5G(第5世代移動通信)で利用可能な、マルチキャリア変調信号を用いた広帯域アンテナ近傍界高速測定システムを共同開発した。
アンリツと京都大学の研究グループは2018年6月、5G(第5世代移動通信)で利用可能な、マルチキャリア変調信号を用いた広帯域アンテナ近傍界高速測定システムを共同開発したと発表した。指向性の周波数特性を、従来方式に比べて100倍も高速に測定することが可能となる。
今回の研究は、アンリツの技術本部先進技術開発センターでセンター長を務める野田華子氏らの研究グループと、京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授、水谷圭一助教らの研究グループが共同で行った。
5Gでは、Massive MIMOアンテナなどの導入が想定されており、アンテナの指向性をより正確に把握することが必要となる。ところが、アンテナ構造の違いなどから従来の方法では正確な測定が困難になったり、非効率的だったりするため、新たな測定方法が求められている。
共同研究グループは今回、スペクトラムアナライザーを用い、変調帯域内で周波数ごとの指向性を一度に取得できるシステムを開発した。具体的には、スペクトラムアナライザーでアンテナから送信されるマルチキャリア変調信号を近傍界領域で受信する。受信信号内の基準信号から算出するチャンネル変動量を用いて、指向性を算出するための振幅と位相情報を抽出する。マルチキャリア変調信号として帯域幅5MHzのLTE信号を測定に用いると、周波数を変更しながら測定を繰り返す必要がなく、測定する時間は従来に比べて約100分の1で済むという。
研究グループは、開発した測定システムを用いて検証実験を行った。ここではマルチキャリア変調信号に、LTE方式の下りリンクで利用されているCP-OFDM信号を用いた。CP-OFDM信号に含まれる基準信号を使って算出した指向性と、従来の近傍界測定で算出した指向性を比較した。この結果、両者の最大誤差は0.5dB程度であり、ほぼ一致することを確認した。
異なるサブキャリアに割り当てられた基準信号を用いて、複数の周波数における指向性を同時に算出できることも確認した。開発した測定システムは、基準信号を持つさまざまなマルチキャリア変調方式に適用することが可能であり、超広帯域信号を用いるシステムの指向性測定に有用であることが分かった。
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