NTTと東京工業大学は、300GHz帯で100Gビット/秒の無線伝送を可能とする無線フロントエンド向け高速ICを開発した。
NTTと東京工業大学は2018年6月、300GHz帯で100Gビット/秒(bps)の無線伝送を可能とする無線フロントエンド向け高速ICを開発したと発表した。
無線伝送のさらなる大容量化に向けて、伝送帯域を拡大しやすいテラヘルツ波周波数帯の活用が注目されている。ところが、IC内部などで不要信号が漏れるため、高い信号対雑音比(SNR)特性を実現するのが極めて難しく、これまでは300GHz帯を利用しても数十Gbpsの伝送容量にとどまっていたという。
研究グループは今回、伝送帯域幅の拡大とSNR特性の向上を両立させることができる技術を開発した。新たに考案した独自の高アイソレーション設計技術をミキサー回路に適用し、InP-HEMT(インジウムリン−高電子移動度トランジスタ)技術を用いてミキサーICを開発した。
ミキサー回路は、局部発振周波数(LO)ポート、無線周波数(RF)ポート、中間周波数(IF)ポートを有する。テラヘルツ波のように極めて高い周波数の信号で動作させると、ポート間で不要信号が漏れて、十分なSNR特性を得られないことがあったという。
今回は、λ/4線路とシリーズ容量を付加する独自の高アイソレーション設計により、ポート間のアイソレーションを飛躍的に向上させ、不要信号の漏れを抑制した。これによりSNR特性を改善しつつ、ミキサーICをモジュールに実装する際に生じる周波数特性の劣化を防止することにも成功した。
研究グループは、開発した300GHz帯無線フロントエンドモジュールを用いて伝送実験を行った。実験では、Back-to-Back伝送で16QAM信号の受信を確認するとともに、300GHz帯において100Gbpsの無線伝送に成功した。
研究グループは開発した技術について、「今回は1波(1キャリア)で100Gbpsの無線伝送を実現した。複数キャリアに拡張したり、MIMOやOAMなど空間多重技術を併用したりすれば、400Gbpsを超える大容量無線伝送も可能」とみている。
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