東北大学の研究グループは、刃物やがれきなどの物体をつかむことができるタフなロボットハンドを開発した。
東北大学の多田隈建二郎准教授、田所諭教授、昆陽雅司准教授、藤田政宏博士後期課程学生らによる研究グループは2018年6月、刃物やがれきなどの物体をつかむことができる、タフで柔軟なロボットハンドを開発したと発表した。がれきなどが散乱する災害現場などの作業用途で利用可能だ。
研究グループはこれまで、形状が異なるさまざまな物体をつかむことができる、ゴム膜の袋型ロボットハンドを開発してきた。ジャミング転移現象を利用するこの方法は、複雑な形状や壊れやすい物体の損傷を抑えてつかむことができる。しかし、とがった形状の物体などをつかむ場合、袋が破れてしまうこともあった。このため、災害現場などで破損したバルブの開閉やガラス破片をつかむなど、作業によっては対応することができなかった。
研究グループは今回、ロボットハンドに伸縮性のある防刃生地を用いることで、柔軟性と耐切創性を実現した。具体的には、防刃生地を先端が半球形状となる袋状に加工し、その表面に滑り止め用のシリコーンゴムを塗布した。
研究グループは、開発したロボットハンドを用いて、耐切創性の実験を行った。開発した布袋は刃物による切り裂きやとがった物体による突き刺しにも、極めて高い耐切創性を有することが分かった。さらに、破損したバルブを開閉する動作の実験も行った。作業箇所には複数のとがった形状があったものの、布袋が破損することなく作業を終えたことを確認した。ニッパーを刃先からつかむ実験にも成功した。
さらに、災害対応用ヘビ型ロボットへの搭載に向けて、ボタン押しやハンドル把持、配電盤開けといった作業についてもその動作を検証し、十分に対応できることが分かった。
研究グループは今後、耐久性のさらなる向上など実用化に向けた研究を行っていく。3年以内に、実環境に近い状況で実用性の確認を行い、廃品回収用の産業ロボットメーカーなどの協力を得て事業化を進める予定だ。
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