東北大学とキーサイト・テクノロジーは、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)の信頼性評価を高速かつ正確に行う技術を開発した。従来システムに比べ2万倍も高速に測定することができる。
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターの遠藤哲郎センター長らによるグループは2018年5月、キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)と共同で、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)の信頼性評価を高速かつ正確に行う技術を開発したと発表した。従来システムに比べて2万倍も高速に測定できるという。
STT-MRAMは、低電圧で高速動作、高い書き換え耐性などの特長を持つ不揮発性メモリで、次世代のワーキングメモリとして注目されており、大手ファウンドリー会社は2018年より実用化を目指している。ところが、本格量産に向けては、DRAMなどとは異なる特性の評価が必要で、新たな測定システムを用意しなければならなかった。特に、磁気トンネル接合(MTJ)に関する特性評価を行う場合、従来のメモリテスト装置では測定効率が極めて悪かった。
こうした中で、国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)とキーサイトは、CIES産学共同研究プロジェクトで得られた成果を基に、STT-MRAM用磁気トンネル接合特性測定システム「NX5730A」を2017年度に製品化した。その後も両者は、信頼性評価の高速化や高精度化を実現するための技術開発に取り組んできた。
CIESとキーサイトは今回、10年のデータ保持時間を決める熱安定性指数を、高い測定精度を維持しながら1.7秒という高速で測定できる技術を開発し、この機能をNX5730Aに追加した。測定時間は従来に比べて2万倍も高速になったという。これに加えて、書き込み電流の評価など、MTJの初期特性を同時に測定できるシステムも開発した。
開発した測定システムを用いて、熱安定性指数が異なる2種類のMTJを評価した。MTJの加工プロセスには従来技術と、新たに開発した技術を用いた。新たな加工技術を用いたMTJは、従来方法で加工したMTJに比べて、熱安定指数が約1.5倍に増加した。これをデータ保持時間に換算すると、単体MTJ素子レベルで1000兆年に相当する。ばらつきを考慮しても100TビットSTT-MRAMで10年のデータ保持が可能となる数値だという。
2種類のMTJについて、スイッチング効率も確認した。新加工技術を用いた場合、従来技術に比べてスイッチング効率が1.3倍に向上することが分かった。この数値は、書き込み電流を約50%も削減できることを示したものだという。
CIESとキーサイトは今後、STT-MRAM用テスト装置の早期商品化を目指す計画である。
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