具体的に、水晶発振回路を起動する時は増幅器を3段構成+容量フィードフォワードパスの構成とする。これにより、一定期間だけ負性抵抗を大きくして起動を高速に行う。定常状態では増幅器を1段構成に切り替える。動作状態に応じて増幅器を再構成することで消費電力を抑える仕組みである。
研究グループは、開発した水晶発振回路を線幅65nmCMOSプロセス技術で試作した。同回路部のチップサイズは58×91μmである。この試作チップを評価した。40MHzで発振させると起動完了までわずか64マイクロ秒であった。従来方式だと1150マイクロ秒も要しており、これに比べると18倍も高速だという。
水晶発振回路の高速化について、他の研究機関が開発している手法との性能比較も行った。これによると26MHz発振における起動時間は30倍の削減効果が得られたという。消費エネルギーの削減効果も大きく9分の1に抑えられることを確認した。
開発した水晶発振回路ブロックは、さまざまなIoT機器に組み込むことが可能である。水晶発振回路を高速起動させることで、IoT機器の間欠動作を容易に行え、電池交換などの頻度を減らすことができるとみている。研究グループは、開発した水晶発振回路を低電力無線機に実装すると、「電池寿命を最大4倍延ばすことが可能」と試算している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.