多層配線の製造工程では、最大で400℃の高温プロセスを使う。これはMTJの製造温度の上限が400℃であるとともに、MTJが400℃の温度に耐えなければならないことを意味する。
MTJの特性で最も重要なのは、「トンネル磁気抵抗比(TMR比)」である。TMR比(単に「TMR」と記述することが多い)は、磁気トンネル接合(TMJ)が反平行状態(高抵抗状態)の電気抵抗と平行状態(低抵抗状態)の電気抵抗の違いを示す指標で、「(反平行の抵抗値マイナス平行の抵抗値)/平行の抵抗値(%)」で表現する。例えば反平行の抵抗値が平行の抵抗値の2倍であれば、TMRは100%となる。TMRは読み出した信号の論理レベルを決めるマージンであり、高いことが望ましい。
もう1つの重要な指標は「保磁力(Hc)」である。Hcは強磁性体で磁化反転が始まる磁界(逆方向の磁界)の大きさであり、MRAMでは不揮発性の度合いを示す。保持力が大きいと、長期間にわたって安定にデータを維持できる。保持力は基本的には高いことが望ましいものの、あまりに保持力が高過ぎるとデータの書き換えが難しくなるので、適切な値の範囲が存在する。
埋め込みMRAM用のMTJでは、MTJのパターン形成後に400℃、60分間の高温処理でもTMRとHcが劣化しないことが求められる。
MTJのTMRとHcの大きさは、MTJのサイズによっても変化する。MTJを微細化しても、一定値以上のTMRとHcを確保する必要がある。
(次回に続く)
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