京都大学、東京大学、東京工業大学らの研究グループは、幻の粒子と呼ばれている「マヨラナ粒子」を発見した。
京都大学、東京大学、東京工業大学らの研究グループは2018年7月、幻の粒子と呼ばれている「マヨラナ粒子」を発見したと発表した。マヨラナ粒子の制御方法を開発すれば、高温でも動作するトポロジカル量子コンピュータへの応用が可能になるという。
今回の研究は、京都大学大学院理学研究科の笠原裕一准教授、松田祐司同教授、大西隆史同修士課程学生(現在は富士通)、馬斯嘯同修士課程学生、東京大学大学院新領域創成科学研究科の芝内孝禎教授、水上雄太同助教、東京大学大学院工学系研究科の求幸年教授、東京工業大学理学院の田中秀数教授、那須譲治同助教、東京大学物性研究所の杉井かおり研究員らが共同で行った。
マヨラナ粒子は、粒子と反粒子の性質を併せ持つのが特長で、1937年にイタリアのエットーレ・マヨラナ氏が理論的に予言した。しかし、素粒子物理学の実験においてこれまで、その存在は確認されていなかったという。ところが最近、超電導体や磁性体の中で、準粒子としてマヨラナ粒子が現れる可能性が指摘されたことで、注目を集めた。
特に、磁性体の論理模型である「キタエフ模型」は、絶対零度の環境でも量子スピン液体状態が現れる。これは、電子スピンが複数のマヨラナ粒子に分裂することによって、トポロジーで保護された量子状態が実現するためだという。
そこで共同研究グループは、キタエフ模型の候補物質である磁性絶縁体「塩化ルテニウム(α-RuCl3)」を用い、量子スピン液体状態で磁場を変化させながら、熱ホール伝導度を高い精度で測定した。この結果、ある磁場範囲で熱ホール伝導度が量子化熱伝導度の2分の1で一定となり、半整数量子化になることが分かった。
絶縁体で熱ホール効果が量子化したことは、電荷をもたない粒子による量子ホール効果であることを示しているという。しかも、熱ホール伝導度が半整数量子化になったことから、マヨラナ粒子によるものと判断した。
さらに、超電導体を用いた研究ではこれまで、マヨラナ粒子による量子化現象が0.01K(ケルビン)という極低温の環境に限定されていた。今回は5K程度で半整数量子化を観測するなど、高温環境でもマヨラナ粒子による量子化が出現することが分かった。
今後は、量子スピン液体に現れるマヨラナ粒子の制御法を開発する計画だ。これによって、高温環境でも動作するトポロジカル量子コンピュータを実現することが可能になるとみている。
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