今回から数回にわたり、働き方改革における介護を取り上げます。突然発生し、継続し、解決もせず、被介護者の死をもってのみしか、完了しない高齢者介護。まずは、私自身の体験に基づく、高齢者介護の実態について語ります。
「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」として政府が進めようとしている「働き方改革」。しかし、第一線で働く現役世代にとっては、違和感や矛盾、意見が山ほどあるテーマではないでしょうか。今回は、なかなか本音では語りにくいこのテーマを、いつものごとく、計算とシミュレーションを使い倒して検証します。⇒連載バックナンバーはこちらから
以下の線表は、実家の近くに住んでいる姉とのメール、約800通から、私たちの両親に関する事件の一部を抜粋して書き出したものです。
両親のプライバシーの問題もあるでしょうが、まあ、こういう息子を育ててしまった責任として、諦めてもらうことにします ―― 仮に私が、彼らに許諾を求めたとしても、もう彼らには答えることはできませんが。
結婚して実家の近く(といっても自動車で15分くらい)に住んでいる姉は、仕事をしながら毎日実家に通い続け、私は、ゴールデンウイーク、夏季休暇、年末年始になると、1人で(または次女を連れて)実家に滞在します。
嫁さんもまた、義父(2018年2月に他界)や義母の介護のため、2カ月に1回は、1週間から10日間くらい仕事を休んで、飛行機で実家に戻っています。
私は、2012年以降、家族全員で旅行をした記憶はありませんが、私たち夫婦がそれぞれに帰省に費している旅費は、家族旅行の出費なんぞ軽く超えて、国内総生産(GDP)に大いに貢献していることは確実です。
さて、今回、私が姉との間でやりとりした800通ものメールの全文を調べて、上図のような線表にしたのは、読者の皆さんに「介護問題の全体像」を俯瞰していただくためです。
今や、介護に関する記事や書籍は、もうそれはうんざりするほど存在しています(Amazonの書籍検索では、「1万冊以上」とだけ表示されて、正確な数字を出してくれません)が、ぶっちゃけ、介護問題に関する"事前準備"には、ほとんど意味がありません。
なぜなら、これらの問題は、私たち姉弟の想定もしない方向から突然発生して、書籍で想定している状況とは全く異なる環境で対応しなければならず、そして、その対応結果が被介護人(例:私たち姉弟の両親)によってバラバラで、そして、介護人(例:私たち姉弟)の状況も異なるからです。つまり、
―― 他人のユースケースは、全く役に立たない
ということです。
そして、さらに重要なことは、これらの問題は、単独で発生しません。こちらの都合などお構いなく、同時多発的にバラバラに発生し、一気に私たちに襲い掛かってきます。
未来を見越してラクができる介護 ―― そんなものは存在しません。私たちは次々と発生する問題に対して、場当たりで対応するだけで精一杯です。そして、次の問題の発生を、ノーガード(無防備)で待ち続けることしかできず、それらの問題が解決に至ることありません ―― 被介護人(親)の死をもって完了するまでは。
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