さて、ここからは後半になります。
前期の「人類が一度も体験したことがないミッションに対する挑戦」は、現在のところ、「どのような形であれ(被介護人が苦痛で苦しもうが、介護人が疲労で壊れてしまおうが)、延命が正義」という方針で、社会制度も法律も行政サービスも設計されています。
これを逸脱すると、法律違反(刑事罰)や、行政サービスを受けられない、などのデメリットで、私たちはがんじがらめになっています ―― が、今回のコラムでは、あえて、この話には触れません(今回のコラムを終わりが見えてこないからです)。
そこで今回は、この方針の是非には触れず、この方針に従った行政、NPO団体、そして、私の専門分野であるテクノロジーなどについて、ざーっと調べてみました。
まず、「行政」です。まあ行政は、あまり民間の具体的な施策について、口を出せないというのは、その立場上仕方がないことかと思います。しかし、公共事業体でもある介護のNPO団体の報告書の内容が、もう一体何やってんだか ―― という感じなのです。
「地域の介護ネットワークを作ろう」とか「介護なんちゃらセンターの設立を呼び掛けよう」という掛け声だけで構成される、具体性にかける小冊子の数々。または研修会を開いた実績(回数、人数、アンケート結果)だけが記載されたの報告書。唯一、使えそうな情報が「介護に関するアンケート用紙のフォーマット」くらい、という体たらくです。
私は、「掛け声」ではなく「具体例」が欲しいのです。特に、個人的には「テクノロジー」をお願いしたいのです。
私は「アルツハイマーの特効薬の発明」を成し遂げろ、とまでは言いません。もっと単純で、もっと喫緊の課題である、
など、そういうテクノロジーの論文や報告書が読みたいのです。
もっとも、介護に関する「テクノロジー」が難しいのはよく分かっています。それならば、「ユースケース」の論文や報告を読ませて欲しいのです。
また、アカデミズムにありがちな、完全な真実を語らない(ウソとは断言できない程度に情報操作した)「成功体験」よりは、現場から出てくる生々しい「失敗体験」の方が、どれほど役に立つかしれません。
例えばそれは、要介護の親を持つ子どもの一人として、本当に心底から困っていること ――
などを、データベース化して開示して欲しいのです。
そのような情報の開示に対する責任うんぬんの話は、高齢者介護については、もう止めませんか? 少なくとも、私は「情報提供者に対して責任を問う」などという、馬鹿げたことは絶対にしません。
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