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ホウ素の分析強度を3倍に、半導体の性能向上に期待東北大らが分光器を改良

東北大学らの研究グループは、現行の電子顕微鏡用軟X線発光分光器(SXES)を改良し、ホウ素の分析強度を3倍以上に高めることに成功した。

» 2018年08月13日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

濃度10ppm以下のホウ素検出と分布の可視化が可能に

 東北大学多元物質科学研究所先端計測開発センターの寺内正己教授と羽多野忠助教、量子科学技術研究開発機構の小池雅人客員研究員および、島津製作所と日本電子は2018年8月、現行の電子顕微鏡用軟X線発光分光器(SXES)を改良し、ホウ素の分析強度を3倍以上に高めることに成功したと発表した。

 ホウ素は、微量でも鉄鋼材料や半導体デバイスの特性に大きな影響を与えるといわれている。このため、微量のホウ素を分析することができれば、軽量で高強度の鋼板や、効率の良い半導体チップの開発につながる可能性が高い。

 寺内氏らはこれまで、SXESを用いた発光分析システムの開発に取り組んできた。2013年には、日本電子がその成果を分析装置として商品化した。その後も性能向上に向けて共同研究を続けてきた。今回は小池氏が、ホウ素の分析強度を高めるための分光配置と回析格子への増反射膜形成の設計を行った。これに基づき、島津製作所が回析格子を作製、寺内氏と羽多野氏が回析格子表面に希土類元素の成膜を行った。

改良型SXESによる測定結果の例 出典:東北大学他

 研究グループは、開発した回析格子を組み込んだSXESを試作し、実証試験を行った。テストの結果、ホウ素の信号強度が3倍以上に増強したことを確認した。今後は、日本電子が販売している汎用SXESにも新しい回析格子を搭載して、実用テストを行う予定である。理論的にはさらなる強度向上が見込めるという。このため、鉄鋼材料や半導体材料に添加された濃度10ppm以下のホウ素検出とその分布を可視化できる装置の開発につながる可能性が高い。

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