896Gbpsの伝送帯域を実現する超高速光送受信モジュール(後編):福田昭のデバイス通信(163) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(23)(2/2 ページ)
37個の回折格子型結合器には、「PROFA(Pitch Reducing Optical Fiber Array)」と呼ぶ専用の光ファイバー部品が接着される。PROFAは回折格子型光結合器と光ファイバーを接続するために開発された光部品で、回折格子と接続する端面(終端面)は、37μmピッチで最大61チャンネルの光ファイバーの集合体となっている。
PROFAは主に3つの部分で構成された部品である。1つは、前述のように、37μmピッチで最大61チャンネルの光ファイバーをまとめた部分で、光集積回路との結合に使う。もう1つは、12μmピッチで最大61チャンネルの光ファイバーをまとめた部分で、この部分は曲げられるようになっている。それから、125μmピッチで最大61チャンネルの光ファイバー(標準的なシングルモードファイバー、あるいはマルチコアのファイバー)をまとめた部分である。最初の部分でシリコン光送受信回路と垂直方向に結合し、次の曲げられる部分を利用して水平方向に折り曲げて、最後に光ファイバーで所望の方向へと光を伝送する(あるいは所望の方向から光を取り込む)構成である。
「PROFA(Pitch Reducing Optical Fiber Array)」と呼ぶ専用の光部品を使ったシリコン光送受信モジュールと光ファイバーの接続。左はPROFAを使って試作した接続部の外観写真。手前が光送受信モジュールのシリコンダイ。奥側が光ファイバー。右は、PROFAと光送受信モジュールの接続部を拡大して撮影した写真。なお、PROFAは光部品メーカーChiral Photonicsの製品である。出典:imec(クリックで拡大)
PROFAの構造図。7チャンネルの光ファイバーをまとめた製品の例。左側が光導波路との接続部、その右が折り曲げ部、右側が光ファイバー。出典:Chiral Photonicsおよびimec(クリックで拡大)
試作した光送受信モジュール(光トランシーバー)では、実際に1チャンネル当たり56Gbpsの速度でNRZ信号を変調し、変調した信号を受信してみせた。変調信号の消光比は2.7dB〜3.3dBである。変調信号を極めて短い光ファイバーを経由して光検出器に送信した(ループバックした)ときの信号対雑音比(SNR)は、3.05〜3.92だった。光変調器のバイアス電圧は2.5V、光検出器のバイアス電圧は−2.5Vである。
光信号の測定波形(アイパターン)から、16チャンネルの変調器と16チャンネルの光検出器の全てが、56Gbptsと高速な信号伝送を達成できていることが分かる。
16チャンネルの変調器と16チャンネルの光検出器の各チャンネルにおける信号波形。光は変調器出力を測定したもの。右はループバックした信号を光検出器で受信してから測定したもの。16チャンネル全ての変調器と光検出器が56Gbpsで動作していることが分かる。出典:imec(クリックで拡大)
(次回に続く)
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