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パナソニックに聞く! 電力線通信のいま(技術編)最大1Gbps、2倍の通信距離を実現(2/2 ページ)

» 2018年09月26日 11時30分 公開
[松本貴志EE Times Japan]
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1つのIPコアで高速化と長距離化に対応するQuatro Core技術

 新世代となる第4世代HD-PLCでは、IoT活用を視野に規格を拡張。その中核となる新技術が「Quatro Core」だ。

 Quatro Coreは、2016年10月よりパナソニックが提案している技術で、通信の高速化と長距離化を1つのIP(Intellectual Property)コアで実現する。「映像系のユーザーからはよりリッチなコンテンツを伝送するための高速化、エネルギーやビル系のユーザーからはスマートメーターなどへの活用をにらんだ長距離化という二極化した要望が多く寄せられてており、これまでのHD-PLCの仕様を見直した」ことが同技術の開発背景だ。

 「Quatro Coreによる高速化では、もともと通信用として敷設された同軸ケーブルの活用を主眼として、さらに広帯域を提供するという位置付けで策定した。長距離化についても、今までマルチホップで長距離通信の要望に対応してきたが、1対1の通信ができないことにはホップもできない。マルチホップ対応の強みをより生かすために、Quatro Coreによって1対1の通信を安定して長距離化することを実現した」(パナソニック)

 Quatro Coreによって、1つのIPコアで用途に高速通信から長距離通信まで5段階にモード切り替えが可能となる。Quatro Coreの標準モードは、IEEE 1901と同等となる240Mbpsの通信速度となるが、4倍モードでは最大1Gbpsの通信速度(同軸ケーブル利用時)を実現する。また、最も長距離通信を行うことができる4分の1倍モードでは、通信速度が50Mbpsになる代わりに標準モードと比較して2倍の通信距離を提供する(電力線利用時)

Quatro Coreの概要(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 Quatro Coreによる高速化は、通信に用いる周波数帯の広帯域化によって実現する。標準モードでは、2M〜30Mbpsの周波数帯を使用しているが、2倍モード/4倍モードでは使用する周波数帯を2M〜60M/120Mbpsとし、リサンプリングによってOFDMサブキャリア間隔を2倍/4倍としている。また、通信速度を標準モードと同じにしたまま使用周波数帯域を拡大することで、複数のチャンネルを設けることも可能だ。「粗悪な同軸ケーブルだと、多数のケーブルが近接配置された場合に混信が発生することがある。複数チャンネルを設けることで、混信を低減することができるため、これは高速化以上に意味あることだと考えている」(同社)

左:Quatro Coreによる高速化手法 右:応用事例(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 さらに、Quatro Coreによる長距離化では、上記のチャンネルを利用。2分の1倍、4分の1倍モードでは、リサンプリングによってOFDMサブキャリア間隔を2分の1倍/4分の1倍とすることで、1チャンネルあたりに使用する周波数帯域を狭めた。高速化と同様に、複数チャンネルを設定することが可能だ。

 では、なぜ1チャンネルあたりに使用する周波数帯域を狭めることで長距離化が可能になるかというと、長距離通信に適切な周波数帯を使用することができるからだ。「一般的な単線では、伝送距離が伸びるにつれて高域側が減衰しやすい。低域側に信号を残しておけば、長距離伝送においても信号は維持できる」(同社)ため、低域側のチャンネルを用いることで長距離通信が可能になるという。

 また、減衰だけでなくノイズ環境によっても長距離通信に適切な周波数帯は異なる。そこで同社では、「通信状況を自動で定期的に確認し、動作モードやチャンネル設定を行う機能を開発中」であるとして、「さらに、マルチホップを組み合わせることで最適な通信を提供できる」と胸を張る。

左:Quatro Coreによる長距離化手法 右:応用事例(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 HD-PLCの採用事例として、ITの導入が進む建設現場や、駐車場の監視カメラ、中小企業の工場を挙げる。HD-PLCを採用した製品や、産学連携での次世代PLC開発などについて、事業面編として後日紹介する。

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