こうした流れを受け、5G用の半導体の需要が増加している。インフラ機器向けでは電源および、高周波デバイスの需要が旺盛になっている。これまで通信用デバイスといえばガリウムヒ素(GaAs)ベースに加え、窒化ガリウム(GaN)デバイス、シリコン、シリコンゲルマニウム(SiGe)などにも引き合いが強まっている。これらの新しい種類のデバイスは高効率化、生産技術の改善に加え、種類の広がりで市場のニーズに対応しているといえる。また、5G対応端末が現れるのは実質2019年以降とされるが、チップセット大手のQualcommは、直近の決算発表で5G関連ライセンスをすでに複数のスマートフォンメーカーと結んだことを発表し、今後の拡がりへの期待も見せている。
5Gの活用は、いわゆるスマートフォンを中心としたモバイルネットワークにとどまるものではないと考えられる。IHS Markitでは、5Gの生み出す経済価値はこれまでの移動通信の世代交代に比べて、緩やかかつ長期間にわたって生成されるものと予測をしている。
商用化に向けて進めている通信キャリアにおいても、収益の成長率が低下している現状では5G事業化の成否はユースケース次第で、それまでは先行費用が収益を圧迫するといっている。IHS Markitの直近の調査では、5G事業化のドライバはまずeMBB(Enhanced Mobile Broadband)、続いてリアルタイムのゲーム、高解像度の動画、さらに続いてIoTといった意見が多く挙げられた。これらをマネタイズするには、キャリア、機器メーカー、コンテンツプロバイダーの横断的な協業が不可欠と考えられる。振り返ってみると、LTEの普及以降で移動通信の世界一大市場となった中国では、SNS、ゲームなどのコンテンツ市場の拡大に加え、決済やモビリティサービスもモバイル端末を介して市場が拡大している。これらのエコシステムには膨大なセンサーや通信機器を搭載した機器が使われていることで、IoTも含めたスマートフォン+αの機器やサービスが将来的には中国5Gインフラを使う経済圏になることが予測される。
5Gの商用化が現実となりつつある現在において、“5Gの活用”=“いわゆるこれまでの移動通信+α”のユースケースの開拓があらゆる業種で求められることになろう。
IHS Markitのテクノロジー部門では、11月8日(木曜日)に「2018 エグゼクティブ・ブリーフィング 〜革新をもたらすテクノロジー、その世界的潮流とビジネスチャンスとは?」と題する無料セミナーを東京コンファレンスセンター・品川にて開催します。「5G」「IoT」「AI」「ブロックチェーン」など、テクノロジー業界関係者のビジネス成功に役立つ重要キーワードに関して、IHS Markit所属の各国アナリスト陣が選抜来日し、集中解説します。さらには同社日本調査部ディレクター・南川明アナリストや中国専門家による「半導体産業の最新展望論」なども交えた魅力的な構成を目指します。[定員100人/参加費無料]
1999年〜ドイツ証券、クレディ・リヨネ証券で産業用エレクトロニクス担当アナリストを担当。その後アセットマネジメント会社にて電子機器、部品、材料、ITサービスのアナリスト/ファンドマネージャーを担当。
2012年〜現職、IHS Markit Technologyのシニアアナリストとして、市場分析/ビジネス分析を手掛ける。
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