ルネサスはe-AIを同社の那珂工場に適用し、実証実験を行ってきた。既存の装置にアドオンでAIを搭載できる「AIユニット」150台を装置に取り付けた結果、異常検知の精度が6倍以上に向上したという(関連記事:「ルネサス、古い装置でもAIが使えるソリューション」)。こうした成果を得たことから、馬場氏によれば、AIユニットを150台から3000台に増やす計画だという。
さらにルネサスは、GEヘルスケア・ジャパンとも共同で実証実験を実施。AIユニットを採用した結果、GEヘルスケア・ジャパンの日野工場(東京都日野市)では、適用した工程における不良品の発生を最大約65%削減することに成功したという。
ルネサス インダストリアルソリューション事業本部 IAソリューション事業部長を務める傳田明氏は、工場の装置に向けてe-AIを普及加速すべく、3段階のアプローチを行うと述べる。まずは、AIユニットの搭載だ。
次のステップでは、装置メーカーに対し、AIの搭載を、例えば拡張モジュールのような形でオプションとして選択できるよう提案する。傳田氏は、「装置メーカーもAIを組み込むことは強く意識している。ユーザーからの要望もあるだろう。装置メーカーがAIをオプションとして搭載できるようになれば、当社のe-AI関連のチップやツールを提供できる」と述べる。
そして最後のステップが、装置の中、メインボード上にe-AIを組み込むことだ。「ここが最終的なゴールであり、同時にルネサスが最も得意なところでもある」と傳田氏は述べる。
現時点では、工場のエンドポイントでは推論の実行がメインになる。学習には高性能なプロセッサが必要になるが、このようなプロセッサはファンで空冷しなければならず、装置に振動を与えてしまうからだ。だが、DRPでe-AIの性能が向上すれば、話は違ってくる。エンドポイントで、推論のみならず学習もできるようになる可能性が高いからだ。
これは、工場にとって最も大きな利点をもたらす。ネットワークにつながずに、工場内だけで学習と推論が完結するようになるからだ。傳田氏は「それが、工場の人たちが目指しているところだ。工場ではセキュリティ上の理由から、データをネットワークにアップロードするのを嫌う」と強調する。「いずれは、エンドポイント、つまりPLCで学習するという傾向になっていくだろう。その時に、われわれはDRPで他のメーカーと差異化できると考えている」(傳田氏)
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