組み込みAIをけん引する、ルネサスの意気込み : electronicaで「e-AI」に注力 (4/4 ページ)
ルネサスは、electronicaでe-AIのデモを幾つか展示した。
まずは、手書きの数字をカメラで撮影し、その画像から正しい数字を推論するデモ。数字を付けた3台のミニカーを走らせる。ミニカーがカメラの下を通過し、数字を読み取って推論すると、ブレーキをかける信号がミニカーに送信され、ミニカーが止まるようになっている。1台目のミニカーは推論をクラウドで、2台目はGPGPUで、そして3台目はe-AI(Class-1のもの)で行う。
左=手書きの数字を上に貼り付けたミニカー。カメラの下を通過すると、数字を撮影し、その画像から推論を実行してどの数字かを当てる/右=ミニカーを走らせるレーン(クリックで拡大)
左=推論の結果。画像右端に、推論した結果の数字が出ている(全て正しい数字)。今回のデモでは、推論の実行はGPUが最も速かった/右=処理は速くても、消費電力は大きい。デモでは、使用しているチップをサーモグラフィーで示していたが、GPUは側面が赤く(=温度が高い)なっていた(ヒートシンクがあるので、全体的に真っ赤にはならない) (クリックで拡大)
モーターの異常を検知するデモも披露した。ルネサスの既存のマイコン「RXファミリ」にe-AIを搭載したものを使用している。モーターからの電流信号をFFT(高速フーリエ変換)で周波数波形に変換し、それを使って推論。その結果をグラフで示していた。FFTは、推論の前処理として必要なもので、FFTから推論まで全てマイコンでリアルタイムに行える。
左=デモで使用したシステムの外観。使用しているマイコンは「RX」ファミリ/右=モーターをわざとオーバーロードさせ、検知できる様子を示している。画像右端のグラフで、赤い線が「Failure」の方向に跳ね上がっているのが分かる(クリックで拡大)
3つ目のデモでは、発表したばかりのRZ/A2Mを使い、メーターの針をリアルタイムで認識し、異常なども検知できるシステムを紹介した。カメラで2つの電流メーターを読み取り、読み取った画像を別のディスプレイに表示する。そのディスプレイ上で針の動きをリアルタイムで追いかけ、針の位置から電流値を推論するというもの。
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このように、カメラで2つの電流メーターを撮影し続けている
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撮影した画像を別のディスプレイに表示。針の動きを追いかけ、針の位置から電流値をリアルタイムで推論している。電流値が高い時には、針を囲んでいる枠の色を赤にしたり、低い時には緑にしたりといったことも可能だ
このデモでマイコン(DRP)が行っているAI向けの前処理。画像のリサイズやフィルタリング、ニューラルネットワーク(NN)に使用できる画像への最適化といったことが行われている。ちなみに、NNもDRPに搭載されている(クリックで拡大)
このようにカメラを使うことで、人間がメーターを監視するのと同じようなシステムを構築できるようになる。なお、このデモの消費電力はシステム全体で約1Wだという。ボード上のチップに触れても、全く熱くなかった。
コップを倒さず運ぶ、学習するサービスロボット
ルネサス エレクトロニクスは「DevCon Japan 2017」で、組み込み型AI(人工知能)を具現化したデモを多数展示した。そのうちの1つが、家庭用サービスロボットだ。ロボットに搭載したプロセッサにディープニューラルネットワーク(DNN)や強化学習を組み込み、「トレイに載せたコップを倒さずに、でこぼこした道を走行するには、トレイの角度をどう制御すればいいのか」を学習していく様子をデモで展示した。
「e-AI」で破壊的なイノベーションを、ルネサス 横田氏
ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」に出展しているルネサス エレクトロニクスの展示内容は、車載製品ではなく、産業機器向けの製品が中心となっている。同社執行役員常務兼インダストリアルソリューション事業本部長を務める横田善和氏に、その狙いなどを聞いた。
環境発電で動作するコントローラー、ルネサスがSOTBを初適用
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2018年11月14日(ドイツ時間)、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」(2018年11月13〜16日)で、IoT(モノのインターネット)機器向けにエナジーハーベスト(環境発電)で得たエネルギーで駆動できる組み込みコントローラー「R7F0E」を発表した。2019年7月にサンプル出荷を開始し、同年10月より量産を開始する。
世界半導体市場規模、2019年は2.6%成長へ
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)は2018年11月27日、2018年秋季半導体市場予測を発表した。同予測によると、2018年の世界半導体市場規模は前年から15.9%成長し4779億3600万米ドルになり、2019年には4901億4200万米ドル(2018年比2.6%増)に成長するという。
AIの開発、半導体業界にとってますます重要に
どの半導体メーカーが、何らかの形でAI(人工知能)分野に携わっているのかは、簡単にリストアップすることができる。ほぼ全てのメーカーが該当するからだ。機械学習(マシンラーニング)は、幅広い可能性を秘めているため、ほとんどの半導体チップメーカーが研究に取り組んでいる状況にある。
ルネサス+Intersil+IDTの“三位一体”で新たな勝者へ
2018年9月11日に、IDT(Integrated Device Technology)を約67億米ドル(約7300億円)で買収すると発表したルネサス エレクトロニクス。米国EE TimesとEE Times Japanは、ルネサスの社長兼CEOである呉文精氏と、IDTのプレジデント兼CEOであるGregory Waters氏にインタビューを行った。
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