東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授らの研究グループは、用途に合わせて切り取り、既存の家具や衣服など身の回りの製品に貼り付けて利用できるワイヤレス充電シートを開発した。
東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授らの研究グループは2019年1月、用途に合わせて切り取り、既存の家具や衣服など身の回りの製品に貼り付けて利用できるワイヤレス充電シートを開発したと発表した。
電磁誘導方式や磁界共振結合方式を用いたワイヤレス充電システムは、WPC(Wireless Power Consortium)やAirFuel Allianceなどの規格に準拠した製品が登場している。ただ、これらのシステムは、給電するエリアが限られていたり、さまざまな形状や利用形態に対応したりするのが難しかった。
研究グループが開発した磁界共振結合方式ワイヤレス充電シートは、「H木型配線」と「時分割給電」技術を組み合わせた。これによって、家具や衣服などの形状に合わせて充電シートを切断して貼り付けても、ワイヤレス充電機能を持たせることに成功した。
一般的なワイヤレス充電シートは、コイルアレイをマトリックス上に配線している。このシートを切り取ると、配線の1部も切断され縦横に接続されたコイルの一部が機能しなくなる。そこで今回、電源部をシートの中央に配置し、H木型配線により中央から外側に向かって電源を配線した。
この配線方式としたことで、シートの途中を切断しても、必要なコイルアレイに電流を供給することができる。また、電源から各コイルまでの配線長が等しくなるため、各コイルにおけるインピーダンスのばらつきも抑えることができたという。
充電シートは、コイルを密に配置することで給電可能な領域の制限は少なくなる。その半面、コイルの磁気的干渉が強まり、給電効率が低下する可能性がある。この課題に対して研究グループは、時分割給電技術を適用した。同時に「オン」となるコイルが隣り合わないようグループ分けを行い、グループごとに給電を繰り返す仕組みである。これによって、隣り合うコイル間の磁気的干渉を回避した。
研究グループは、開発した技術を用いて、外形寸法が400×400mmのフレキシブル基板上にワイヤレス充電シートを作製した。重さは82gである。このシートは、数百kHz〜数MHzの磁界を用いて最大5Wまでの給電が可能であることを確認した。
研究グループは今後、印刷エレクトロニクス技術を活用し、シート内の配線と素子を一括で印刷する研究に取り組む。なお、開発した成果を用いて、家具やかばん、衣服、収納ボックスなどへの応用例を具体的に示した。
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