新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は、窒化タンタル光触媒を用いた赤色透明の酸素生成光電極を、東京大学とともに開発した。水の分解反応による水素/酸素製造において、太陽光エネルギー変換効率5.5%を達成した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は2019年1月、窒化タンタル(Ta3N5)光触媒を用いた赤色透明の酸素生成光電極を、東京大学とともに開発したと発表した。開発した酸素生成光電極と水素生成光電極を組み合わせた水分解用タンデムセルでは、太陽光エネルギー変換効率5.5%を達成した。
光触媒を用い、太陽光を有効活用するための研究が進んでいる。光触媒のエネルギー変換効率を改善する研究もその一つである。NEDOなどの研究グループは、窒化タンタル光触媒を用いた水素、酸素製造において、世界最高水準の太陽光エネルギー変換効率を目指している。
研究グループは今回、窒化タンタルを成膜する導電性基板に、透明で低抵抗、耐熱性に優れたGaN/Al2O3を用いた。その上に、スパッタリング法で赤色透明の酸素生成光電極を作製した。この酸素生成光電極を電解液に浸し、疑似太陽光を照射しながら、外部から電位を印加すると光電極上で水の酸化反応が起こり、酸素が生成される。
開発した酸素生成光電極は、0.6V vs RHE(可逆水素電極)付近から水の酸化反応が始まる。1.23V vs RHEで6.3mAcm-2の光電流を発生する。この数値は疑似太陽光の照射下における窒化タンタル光触媒の理論最大電流値の50%に迫る性能だという。
開発した酸素生成光電極は、赤色透明であり、600nmよりも長い波長の光は背面に透過する。測定結果から長波長の光透過率は70%以上であることが分かった。600nmより波長の長い光を活用する水素生成光電極と組みわせることにより、2段型水分解用タンデムセルの1段目に使うことも可能である。
研究グループは、開発した酸素生成光電極を1段目に、CuInSe2ベースの水素生成光電極を2段目に、それぞれ配置した2段型のタンデムセルを作製した。疑似太陽光の照射下における水の全分解反応を検討したところ、太陽光を用いた水の分解反応による水素、酸素製造において、照射を始めた15分後には、太陽光エネルギー変換効率5.5%を維持することができたという。
NEDOとARPChemは今後、実用化に向けて水素製造デバイスおよびモジュール構造の最適化などを行い、2021年度末にも太陽光エネルギー変換効率10%の目標を達成する考えだ。
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