現時点では残念ながら、5G規格の第1段階である「Release 15」がドラフト段階にある状況で、6Gの検討には至っていない。少なくとも「Releases 16」と「Releases 17」としてまとめられた追加規格が2020年代半ばに議論される見通しで、多くのアナリストが、さらに多くの5G規格がリリースされると予想している。そうなれば、6Gの初期展開は2030年以降にずれ込む可能性もある。
一方で、5G展開への関心はそれほど高まってはいない。それは、5Gの展開に掲げられている3つの目標について、次のような懸念があるためだと考えられる。
1つ目の目標は、160MHzの帯域幅と4×4のMIMO(多重入出力)アンテナの導入によって、理論上最大10Gビット/秒(bps)のデータ伝送速度を提供し、スマートフォンで数百Mbpsのデータ伝送を実現することだ。これは一見素晴らしいことのようだが、こうしたアップグレードの費用対効果についてサービスプロバイダーがユーザーに対して実施した調査では、このような速度が従来のスマートフォンに求められているかどうかは疑わしいという結果になった。
2つ目の目標は、低レイテンシやフォールトトレランス(耐障害性)、迅速なフェイルオーバー(障害発生時の予備システムへの切り替え)、極めて高い信頼性が必要なミッションクリティカルなアプリケーションに対応することだ。ファーストレスポンダー(初動要員)が無線ネットワークでこうした機能セットを使用できることには大きなメリットがあるが、警察や医療用の無線サブネットワークのユーザーが5G展開の主要コスト負担をいとわないとは考えにくい。
3つ目の目標は、5G、IoT、自動運転車のコネクティビティといった分野向けに、何万もの低データレートノードをサポートすることである。産業用や自動車用ネットワークに5Gの展開コストの負担を強いることは難しい。
サービスプロバイダーの観点から見た場合、3GHz帯以下だけをとっても5Gの展開には課題が多い。3GHz以下のサービスは最もフレキシブルで、通信事業者はピコセルやフェムトセルなど、さまざまなスモールセルの提供が求められるが、これらのサービスは2010〜2015年時点ではユーザー数が少なく収支は赤字だった。さらに、11GHz帯などミリ波長距離通信などの新しいサービスは、専用の機器が必要になる。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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