電気通信分野において、サイバーセキュリティ関連のFive Eyes標準規格を維持することは、非常に重要な戦略であるだけでなく、安全保障上の利益にもなる。これが失われると、情報報告交換量が減少するだけでなく、英国が将来的に、情報収集関連の技術開発の取り組みから除外されてしまう可能性もある。
米国家安全保障局(NSA)も、同様の姿勢を示している。
また、携帯通信事業者の業界団体であるGSMA(GSM Association)も、欧州各国の政府および通信事業者に対して、「地域的な保証試験および認証制度を共同で確立することにより、ネットワーク機器の供給における競争力を維持しながら、ネットワークセキュリティの信頼性を提供すべきだ」と要請している。
GSMAは声明の中で、当然ながらHuaweiやZTEを名指ししてはいないが、中国サプライヤーからの機器を完全に禁止するのは間違っているということを明示している。またGSMAは、「ネットワークセキュリティには、事実とリスクに基づいたアプローチが不可欠だ」と強調している。
今回の提案は、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress(MWC)2019」(2019年2月25〜28日)の開催直前に行われたことから、サプライヤーや通信事業者、規制当局などの間で興味深い情報交換が行われたはずだ。このイニシアチブが始動すれば、完全な透明性を実現することが不可欠になるため、セキュリティの観点から、あらゆる機器メーカーが、精査のために自社製品を提出してから導入の適合性が判断されるようになるだろう。
だが、通信インフラ機器の分野に、これほどまでに政治的介入があることの本当の危険性は、通信業界が分断、断片化され、グローバルサプライチェーンの崩壊を招きかねない点にある。
米中間の貿易摩擦の悪化は、欧州の機器メーカーが潜在的な脅威にさらされることになるのである。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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