米国のドナルド・トランプ大統領は、500億米ドル相当の中国製品に25%の関税を課すと発表した。同措置の対象には半導体サプライチェーンの製品も多く含まれることから、業界アナリストや市場関係者は懸念を示している。
米国のドナルド・トランプ大統領は、500億米ドル相当の中国製品に25%の関税を課すと発表した。同措置の対象には半導体サプライチェーンの製品も多く含まれることから、業界アナリストや市場関係者は懸念を示している。
米国の半導体企業とサプライヤーは、エレクトロニクス製品や部品の売り上げの減少につながることを懸念して、関税措置と世界の2大経済大国間の貿易戦争の激化に反対している。
トランプ政権は、中国との貿易による3750億米ドルの赤字を埋めて、米国産業にとってマイナスと思われる中国の政策(技術移転の強要や知的財産権の侵害など)に対抗するには、関税が必要だと主張している。
半導体機器サプライヤーやEDAベンダー、エレクトロニクスサプライチェーンに関わる企業が加盟するSEMI(半導体製造装置材料協会)は、知的財産の保護に向けた政府の取り組みに対しては支持を表明しているが、「関税措置は、対中貿易に関する米国の懸念に対して効果があるとは思えない」と述べている。
SEMIのパブリックポリシーマネジャーを務めるJay Chittooran氏が2018年6月15日にSEMIのWebサイトに投稿したブログによると、米通商代表部(USTR:U.S. Trade Representative)が2018年4月に発表した関税対象の製品リストに掲載された半導体製品の約80%は、現在もリストに残っているという。対象製品には、中国から米国に輸入される試験検査装置やスペアパーツなどが挙げられている。
半導体メーカーを代表する業界団体である米半導体工業会(SIA)も、SEMIの見解に同意している。
SIAの広報担当は、「米国の半導体業界は、中国による強制的な技術移転や知的財産権の侵害を懸念している点ではトランプ政権に同意している。一方、中国から輸入される半導体製品は、実際はそのほとんどが米国で設計、製造されているため、関税措置は逆効果であり、中国での知的財産や産業政策に関する深刻な問題には対処できないと考えている」という見解を電子メールで発表した。SIAは、「製品に関税を課すことは競争力の低下を招き、中国との貿易問題の対処にはならないことを政府に説明していきたい」と述べている。
EE Timesがインタビューした複数の業界アナリストも、関税措置に懸念を示し、「中国の政策に対する米国の懸念に対処できるかは疑わしい」と有効性に疑問を投げかけた。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるBill McClean氏は、「関税は、消費者物価の上昇やビジネスの世界的な減速、エレクトロニクスを含むあらゆる産業へのマイナスの影響を招く可能性がある」と指摘している。
McClean氏は、「エレクトロニクス業界がこの20年間で、よりコンシューマー製品に焦点を当てるようになってきた今、(関税の)影響は極めて厳しくなる可能性がある」と述べる。「残念なことに、近いうちに対メキシコ、対カナダでも同様の状況が発生するだろう。これらの貿易摩擦は、さらに激化する可能性がある。収拾がつかなくなるうちに、双方でできるだけ早く合意に達すべきだ」(同氏)
International Business StrategiesのCEO(最高経営責任者)であるHandel Jones氏は、「貿易不均衡は確かに問題だが、中国が、米国から製品を購入するようにしていくことが重要だ。現在の米国の対中アプローチは、逆効果にしかならないだろう」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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