室温で高速かつ高感度にテラヘルツ電磁波を検出:MEMS両持ちはり共振器構造を作製
東京大学生産技術研究所は、MEMS技術で作製した共振器構造を用い、室温環境で高速かつ高感度にテラヘルツ電磁波を検出できる素子を開発した。
東京大学生産技術研究所光物質ナノ科学研究センターの平川一彦教授と張亜特任助教(当時)を中心とする研究グループは2019年5月、MEMS技術で作製した共振器構造を用い、室温環境で高速かつ高感度にテラヘルツ電磁波を検出できる素子を開発したと発表した。
従来のテラヘルツ検出器は、高い感度を得るために検出素子(ボロメーター)を液体ヘリウム温度(約−270℃)の極低温まで冷却して用いるのが一般的であった。このため、テラヘルツ検出器の利活用は限られていた。
研究チームは今回、GaAs(ガリウムヒ素)系半導体を用い、長さ約100μmのMEMS両持ちはり共振器構造を作製した。微小な共振器構造にすると、室温でも極めてシャープな共振周波数特性を示すことが分かっている。
この構造にテラヘルツ電磁波が入射されると、MEMSはりは電磁波を吸収して温度が上昇し熱膨張する。開発したテラヘルツ検出器は、熱膨張によって生じる共振周波数の変化を読み出すことで、入射したテラヘルツ電磁波の強度を検出する仕組みである。
開発したテラヘルツ検出器の構造 出典:東京大学生産技術研究所
開発したテラヘルツ検出素子は、焦電検出器や酸化バナジウムボロメーターといった従来の室温動作熱型テラヘルツ検出器と同等の感度を維持しつつ、100倍以上も高速なテラヘルツ検出を可能にした。
研究チームは、開発したテラヘルツ検出素子が簡便に利用できるため、さまざまなテラヘルツ計測器に組み込むことができるとみている。また、集積化を進めることで、イメージング用テラヘルツカメラなども実現可能だという。
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