実は、日本は先進国の中でも「起業活動の活発度」が低い。それはなぜなのだろうか。筆者は4つの問題があると考えている。
⇒「イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」バックナンバー
日本のベンチャーエコシステムをいかにして育てればよいのか――。その解を探るためには、まずは日本のベンチャーエコシステムが現時点で抱えている課題を明らかにする必要があるだろう。
昔は、よい学校に進学し、よい会社に就職して、会社人生をまっとうして……というのが、日本人のスタンダードな生き方だった。だが、最近は、働き方や生き方が大きく変化しつつある。就職にしても、大学を出てベンチャーに行くような人が増えているように思う。「大企業に勤める方が、よっぽどリスクが高い」と考える人も出てきた。一流大学を出ても、大企業に就職せずに、いきなりベンチャー企業に入ったり、あるいは自分で起業したりする若者も増えてきている。さらに、大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーの出身者がベンチャーに入社したり起業(DeNAなど)したりするなど、大手企業からベンチャーに転職する人も、昔ほど珍しくはなくなっている。
ベンチャー企業に対して、社会全体が関心を持つようになってきているのではないか――。筆者はそう感じている。
前回「日本のベンチャーエコシステムは、いかにして育てるか」でも触れたように、日本でも世界に問える技術を持つベンチャーは確実に増えている。とはいえ、まだまだ課題を抱えているのも事実だ。今回は、起業とベンチャー企業に関わる課題を考えてみよう。
日本のベンチャー企業に関わる課題としては、起業数がまだまだ少ない、また起業してもそのベンチャー企業をうまく育て行ける経営者の層がまだまだ薄いということが挙げられる。
ベンチャー企業が抱える課題の筆頭に挙げられるのが、ベンチャー設立に関わる環境的な課題だろう。ややきつい言い方をするのであれば、日本では「ベンチャーが生まれることを阻害されている」感が強い。データを追って、その傾向を見て行こう。
米国マサチューセッツ州ボストンの郊外Babson ParkにあるBabson College(バブソン・カレッジ)に拠点を置くGEM(Global Entrepreneurship Monitor)という組織は、過去20年にわたりアントレプレナーシップに関する世界中のデータを集めている。
指標の一つに「TEA(Total early-stage Entrepreneurial Activity)」というものがある。これはいわば、起業活動がどれくらい盛んであるかを示すものだ。このTEAを国別にまとめたものが、図1である。図1に示した8カ国の中で、日本は長年にわたりTEAが最も低い。
なぜ、日本の起業数は、いまだに少ないのか――。
筆者は、大きく4つの理由があると考えている。
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