さて、今回も、働き方改革実行計画から、「学習」に関する分野をピックアップしてみました。
このように、ほぼ全部の分野に関して「教育」への言及がありますが、比較的、その対応策が具体的に記載されているのは、「女性」と「子ども」です。これは、政府が、この2つの分野については、先行的に着手しているということを示しています。
これは、おおむね妥当な判断だと思います。まず、就職氷河期世代(30万人)、外国人労働者(100万人)と比べて、女性の労働人口は、2000万人以上です。マスの大きさが違い過ぎます。そして、子どもへの教育投資は、将来の日本への投資そのものといっても過言ではありません。この分野への投資を出し渋ったら、日本の将来はありません。
ところが、「働き方改革実行計画」の中では、各種の支援や補助金等についての言及はあるものの、具体的な施策についての言及はありません。教育にしても「どのような教育を、誰に対して、どのタイミングで施すべきか」という話が1ミリも登場しません。
「リカレント教育」について説明する前に、まずは、そのリカレント教育の対(つい)となる、「学校教育」について、教育基本法から読み解いてみたいと思います。
学校教育の目的は「日本人の製造(育成)」であり、教育基本法には、その製造すべき日本人の仕様(スペック)と品質(クオリティー)が記載されています。
もっとも、私は、このスペック通りに製造され、クオリティーチェックされた日本人を見たことがありません。なにしろ私自身、「民主主義と文化的国家の発展を担い」「世界平和と人類への貢献ができる」というQA(Quality Assurance:品質保証)テストを受けたことがないのですから。
また、2006年に追加された、「公共精神」「人間性」「創造性」「伝統継承」に至っては、目標数値は言うまでもなく、ユースケース(事例)すら提示されていません。
ところが、その時の法改正で、「日本人の製造」を担う「製造責任者」だけは、具体的に記載されることになりました。
それを総括すると、子どもの教育を、国家だけに押し付けるんじゃね〜よ、ということになります。
具体的には、
「おい教師! 漫然と教科書読んでいるんじゃねーぞ。教え方を日々研究して、子どもの成績をきっちり上げるところまでが、お前らの仕事だ(9条1項)」
「おい保護者! 基本的な社会常識を教えるのは、お前らの仕事だ。なんでも国家や教師に頼ってんじゃねーぞ(10条1項)」、
さらに驚くべきことに、
「おい町内会! 地元を守りたいのであれば、地元の子どもの安全と、しつけの両方を街ぐるみでやれヨ(13条)」
とまで言っています。
このように、教育基本法は、「日本人の製造責任者」は示すようになりました。しかしその「製品内容(スペック、クオリティー、製造方法)」については、あいかわらず不明瞭なままです。
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