東北大学とスタンフォード線形加速器国立研究所らによる国際研究チームは、超伝導と共存あるいは競合する2種類の電荷秩序が存在することを発見した。
東北大学金属材料研究所とスタンフォード線形加速器国立研究所を中心とした国際研究チームは2019年8月、超伝導と共存あるいは競合する2種類の電荷秩序が存在することを発見したと発表した。
近年は、さまざまな銅酸化物高温超伝導体で電荷秩序が観測されている。この電荷秩序相と超伝導相との関係性を解明するため、多くの研究が行われている。
国際研究チームは今回、共鳴軟X散乱(RSXS)に用いる検出器の性能を改善し、高い感度で電荷密度波(CDW)を検出することに成功した。実験では、RSXSを用いてホールドープ型銅酸化物高温超伝導体「La2-xSrxCuO4」の全組成・温度領域で電荷密度波の性質を調べた。
この結果、0.10<x<0.16の広い組成領域で、電荷秩序の存在を確認した。また、x=0.135を境に、低温でスピン密度波(SDW)が存在する組成領域(x<0.135)と存在しない領域(0.135<x)で観測される電荷秩序は、それぞれ超伝導と競合あるいは共存することを発見した。
x=0.14とx=0.13の試料におけるCDWの温度依存性も調べた。これによると、x=0.14の試料は超伝導転移温度(Tc)以下で、CDWに由来するピークの強度が減少し、半値全幅(FWHM)が一定となった。この結果から、超伝導と競合するCDWであると判断した。
これに対してx=0.13の試料は、Tc以下でもCDW由来のピークの強度が増大してFWHMが減少し続けた。超伝導の発現とは関係なく、CDWが発達しているためだという。また、低温でSDWも存在し、スピンと電荷が空間的にストライプ模様を形成し秩序化している相(ストライプ相)が超伝導相内にあることを示しているという。
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