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NICT、Wi-SUNを活用し地域見守りなどを検証黒部市在住の高齢者世帯が対象

情報通信研究機構(NICT)ソーシャルICTシステム研究室は、Wi-SUNとWi-Fiを融合活用した無線ネットワーク構築技術を開発した。この技術を用いて、黒部市在住の高齢者世帯を対象とした「地域見守り」と「電子回覧板」の実証実験を2019年10月より、3カ月間の予定で始める。

» 2019年09月25日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

通常の仕事を「しながら」サービスを提供

 情報通信研究機構(NICT)ソーシャルICTシステム研究室は2019年9月、Wi-SUNとWi-Fiを融合活用した無線ネットワーク構築技術を開発したと発表した。この技術を用いて、黒部市在住の高齢者世帯を対象とした「地域見守り」と「電子回覧板」の実証実験を2019年10月より、3カ月間の予定で始める。

 地域見守り実証実験では、Wi-SUN対応の無線システムを活用し、業務用車両が対象エリアの近くを走行する時に、通常の仕事をしながら、高齢者など見守り対象者の状況を把握できる仕組みを導入する。電子回覧板実証でも、地域の業務車両が通常の仕事をしながら、社会福祉協議会からのお知らせを、Wi-Fiも活用しながら配信するシステムの検証を行うことにしている。

業務用車両による「ながら」見守りと電子回覧板実証のイメージ出典:NICT

 具体的には、NICTが新たに開発した小型の「すれ違いIoT(モノのインターネット)無線ルーター」を宅内と業務用車両に設置する。IoT無線ルーターはWi-SUNに対応している。互いの電波が届く範囲に近づくと、地域の情報を自動的に収集する。携帯電話のネットワークなどは用いないという。筐体の外形寸法は90×45×12mmと小さい。

上は開発した宅内用と車載用のすれ違いIoT無線ルーター外観。下はすれ違いIoT無線ルーターを搭載したバスと業務用車両 出典:NICT

 小型のすれ違いIoT無線ルーターは、Wi-SUNに加えWi-FiやBLE4.0による無線機能に対応する。まず、Wi-SUNで数百メートルの比較的広いエリアを直接カバーする。リレー方式により離れた端末間でも情報を共有することができる。情報発生から長時間経過し、利用価値が下がった情報は伝送しない機能も備えているという。なお、電子回覧板などを配信する必要がある場合は、その近くまで移動しWi-Fi通信で効率よく配信することができる。

 NICTが推進する「くろべネット地域見守り実証」では、宅内にすれ違いIoT無線ルーターを設置する。これと同時に家屋の玄関ドアには、加速度センサーや信号処理機能などを内蔵したドア開閉センサー機能付き「Wi-SUNビーコン発信機」(つぶやきセンサー)を置く。検知したドア開閉の回数が、一定数以上であれば正常と判断してビーコンを発信する。開閉数が一定数以下だと「要注意」のビーコンを配信する仕組みである。

 社会福祉協議会などの車両が、「要注意」の信号を直接検知すれば迅速に対応する。そうでない場合でも、車両同士がすれ違い通信を介して中継することにより、社会福祉協議会などと即時に情報共有が可能である。

上はドア開閉センサー機能付きWi-SUNビーコン発信機(つぶやきセンサー)と取り付けイメージ、下はすれ違いIoT無線ルーターを搭載した車両のタブレット画面表示例出典:NICT

 NICTは、開発したすれ違いIoT無線ルーターを大阪府内の、ある木造家屋2階の窓際に試験設置し、家屋周辺の道路を走行する車両との通信可能性について事前検証を行った。この結果、電波を遮る物がない北側は、約300m以上離れても通信可能な受信レベルであった。一方、建物が立ち並ぶ南側は、通信距離が100〜150mとなった。

上はすれ違いIoT無線ルーターを木造家屋2階の窓際に設置した例。下は木造家屋にすれ違いIoT無線ルーターを設置した場合の通信可能エリア検証結果の一例 出典:NICT

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