10年以上にわたりパナソニックが開発を進めてきた高速電力線通信「HD-PLC」は、「IoT-PLC」と名を改め、IoT(モノのインターネット)社会の発展の中で再び注目を集めている。同社は現在、特に家庭向けネットワークとしての展開に焦点を当て、ルール化に向けた動きなどを進めている。今回、これまでの経緯や最新の取り組みについて、開発担当者の話を聞いた。
10年以上にわたりパナソニックが開発を進めてきた高速電力線通信「HD-PLC」は、「IoT-PLC」と名を改め、IoT(モノのインターネット)社会の発展の中で再び注目を集めている。同社は現在、特に家庭向けネットワークとしての展開に焦点を当て、ルール化に向けた動きなどを進めている。今回、これまでの経緯や最新の取り組みについて、開発担当者の話を聞いた。
「電力線通信(PLC)」は、電力線などを通信ネットワークとして利用し、「コンセントに差すだけでデータ通信ができる」技術だ。既存の電力線などを用いるため配線工事が不要であり、無線が届かないような環境でも通信ができることが大きな利点であり、パナソニックは、2003年には2M〜28MHzの高周波を使用する高速PLC規格「HD-PLC」を開発。国内の法整備がなされた2006年には家庭向けHD-PLCアダプターを発売するなど普及活動を拡大していたが、当時はまだ技術的な課題が多く、また同じ時期にWi-Fiが急速に普及したこともあって、次第にその存在感は薄れていった。
しかし、同社はその後もHD-PLCの国際標準化を進めるなどするとともに技術開発を継続。そして2015年、最大1000ノード、最長約2kmの通信が可能となるマルチホップ技術対応を契機に、産業用途において利用が拡大したという。
これまで、無線ではつながりにくいエレベーターといった閉空間や、セキュリティ上無線が使えないプラント施設での利用のほか、既存配線活用によるコスト削減という観点から街灯に取り付けたセンサーに適用されるなど、国内外で導入が進んでいる。パナソニック ビジネスイノベーション本部 IoT PLCプロジェクト プロジェクト長の荒巻道昌氏は、「チップベースだが、シリーズ合計で約300万台の実績がある」と説明した。
そして、こうした「通信の確実性」「高い安全性」「導入、配線コスト軽減」という特長は、さまざまな機器がネットでつながるIoT社会においても有益だとして、同社はHD-PLCを「IoT社会のネットワークを支える基盤技術として規格化していく流れになった」(荒巻氏)という。
IoT向けとして同社が提唱する第4世代「HD-PLC」は、最大通信速度は240Mbps(前世代と同様)だが、最大1Gbpsの通信速度(同軸ケーブル利用時)の4倍モードや、利用通信帯域を縮小することで、通信速度が低下する代わりに最大2倍の通信距離(電力線利用時)を実現する新技術を搭載し、2019年3月には、国際標準規格IEEE1901aに承認された。この標準化を受けて、同社はHD-PLCを「IoT-PLC」と改めた。
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