ここからは、マイクロLEDパネルの研究開発における主なトピックスを紹介していこう。マイクロLEDパネルが注目を集めたきっかけは、ソニーが2012年1月に民生用エレクトロニクスの展示会「2012 International CES(Consumer Electronics Show)」で55型フルHDディスプレイを参考展示したことだろう。光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の微小なLEDをそれぞれ約200万個ずつ、合計で約600万個を並べることでフルカラーのディスプレイを実現した。同社のフルカラー液晶ディスプレイに比べ、約3.5倍のコントラストと約1.4倍の色域、約10倍の応答速度を達成している。
また2014年5月には、AppleがマイクロLED開発ベンチャーのLuxVue Technology(米国カリフォルニア州サンタクララ)を買収したと米国のWebメディア「TechCrunch」が報じた(参考リンク)。前述のようにAppleは日本でもマイクロLEDに関する特許を数多く出願している。Appleは小型のマイクロLEDパネルを搭載したスマートウオッチを来年(2020年)中に製品化すると予想されている。
2016年5月には、ソニーがマイクロLEDを使った高画質ディスプレイ技術「CLEDIS(Crystal LED Display System)」によるディスプレイシステムを製品化すると発表した(関連記事)。このシステムは複数台のディスプレイユニットと最大20台のコントローラで構成される。ディスプレイユニットは画素数が320×360画素、画素ピッチが1.26mm、大きさが403×453mmのフルカラー表示である。1台のコントローラは最大で72台のディスプレイユニットを制御できる。コントローラは最大で20台を同期できるので、72×20=1440台のユニットによる超大型ディスプレイを構築できることになる。
2017年4月には、台湾でディジタルサイネージ向けのマイクロLEDパネルを開発する官民プロジェクトが始まった。台湾政府が設立した研究機関の工業技術院(ITRI)がプロジェクトの中心となっている。2019年末までを開発期間とする。
同じく2017年の5月にはシャープが、台湾の鴻海グループが合弁事業として進めているマイクロLEDディスプレイ開発ベンチャーeLux(米国デラウェア州ドーバー)に出資すると発表した。シャープが保有するマイクロLEDの製造特許21件を、eLuxに現物出資する。なおシャープは、鴻海グループの中核企業である鴻海精密工業の子会社である。
2018年1月のInternational CESでは、Samsung Electronicsが146型と巨大なマイクロLEDディスプレイ「The Wall」(プロジェクト名およびブランド名)の試作品を出展した。同年8月には欧州の民生用エレクトロニクス展示会「IFA」でLG Electronicsが173型のマイクロLEDディスプレイを参考出展した。
このほか「2019年度版 実装技術ロードマップ」の発行には間に合わなかったが、京セラが2019年10月に展示会「CEATEC 2019」で1.8型と小さなマイクロLEDパネルを参考出品した。画素数は256×256画素、画素密度は200画素/インチ、フルカラー表示である。
このほかマイクロLEDに関する詳しい内容は、「2019年度版 実装技術ロードマップ」を参照されたい。同ロードマップはこちらから購入できる。
(次回に続く)
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