大阪大学は、強相関酸化物のマグネタイトで10nmサイズの立体構造体を作製し、欠陥の少ない領域で、優れた伝導特性(転移特性)を観察することに成功した。
大阪大学は2019年7月、強相関酸化物のマグネタイト(Fe3O4)で10nmサイズの立体構造体を作製し、欠陥の少ない領域において、優れた伝導特性(転移特性)を観察したと発表した。
今回の成果は、大阪大学産業科学研究所のルパリ・ラクシット特任助教(研究当時)、服部梓助教(研究当時は科学技術振興機構さきがけ研究者兼任)、田中秀和教授の研究グループと、産業技術総合研究所の内藤泰久主任研究員、島久主任研究員、秋永広幸総括研究主幹らの共同研究によるものである。
マグネタイトは、金属‐絶縁体転移(フェルベー転移)によって電気伝導度が100倍以上も変化することから、ナノエレクトロニクス、スピントロニクスの分野でその応用が注目されている。ところが、ナノ細線などナノレベルまで構造体が小さくなると、欠陥密度が上昇し転移特性が低下するなど課題があった。
研究グループは今回、単結晶化した3次元ナノテンプレート基板の側面を起点に、高品質ナノ構造体を実現するための作製手法「3次元ナノテンプレートPLD法(pulse laser deposition:パルスレーザー堆積法)」を開発。産業技術総合研究所で開発された「10nmの微小間隙(かんげき)を有する電極作製技術」と組み合わせ、ナノ構造体を作製した。このナノ構造体にもアンチフェーズバウンダリー(異相境界)など欠陥は存在するが、欠陥の少ない領域を選択して利用すれば、薄膜のマグネタイトに比べて、抵抗変化率は5倍以上も上昇することが分かった。
研究グループによれば今回の研究成果を活用し、マグネタイトの相転移と直結しているトライメロンなどの正確な見積もりが可能になるという。また、マグネタイトの金属−絶縁体転移の機構解明にもつながるとみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.